今回は小説『殺人者』望月 諒子著のご紹介!
なんともダイレクトなタイトルからも闇の深そーな作品。
想像できるかもしれませんが、ミステリ作品です。
作品の主要人物である「木部美智子」シリーズの作品らしく、
本作品以外にも関連作品があるようです。
書籍の情報を以下にまとめます▼
INFO
タイトル:『殺人者』
著者:望月 諒子
出版社:株式会社 新潮社
発売日:2022年11月1日(発行)
メモ:登場人物たちの心情に惑わさられる
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あらすじ
大阪で相次いだ猟奇殺人。被害者はいずれも男性で、ホテルで血まみれになり死んでいた。フリーのルポライター木部美智子は、警察に先んじて「謎の女」の存在に気がつく。綿密な取材を続け女の自宅へと迫る美智子。だが、そこでは信じられない光景が待ち受けていた。そして、さらなる殺人が発生し・・・・・・事件の背景に隠された衝撃の真実とは!?承認欲求、毒親、嫉妬など心の闇を描く傑作長編。
『殺人者』裏表紙より
読書感想
優しさの追求
電車に乗ると優先席がある。優先席はお年寄りや体に不自由がある人、また妊婦などが優先的に座る席とされている。しかし、それに該当しない人であっても座ることは全く問題ではなく、あくまでも優先席なのである。
もし自分が優先席に座っていて、お年寄りが電車に乗ってきたら席を譲ることがモラルとしてある。席を譲る人は優しさがあり、モラルの整った人と言える。一方で優先席に座っているにも関わらず、知らん顔をして席を譲らない人は優しさのない人に映る。
しかし中にはそもそも人に席を譲る行為が苦手な人がいる。そういった人たちは、はなから優先席には座らない。優先席に座らなければ、席を譲る必要もないのだ。もっと言ってしまうと、優先席以外の席にも座らないことがある。
なぜなら、混み合いそうな時間帯はこれから席を必要とする人が乗ってくる場合があるからだ。それらの人たちがみんな優先席に座れるとは限らない。優先席に座れない場合、至極自然な流れで優先席以外の席を譲る必要がある。だから混み合いそうな時間帯ではたとえ席が空いていたとしても座ることをしないのだ。
果たしてこれは優しさなのだろうか?席を譲るのが苦手な自分のことを思ってただ座らないだけなのだ。つまり、その後、自分以外の人が空いている席に座り、その人が席を譲らなかったとしてもこちらとしては我関せずの姿勢だ。「お年寄りのために席を譲りましょう」なんてことは言うはずもない。
優しさを追求するならば、一目散に席に座り、席を必要とする人が乗ってきた時に席を譲ってあげる。これが必要なのか。だけど、そこまでいってしまうと今度は席を譲ってあげる自分に酔っている感がある。果たしてそれは優しさなのだろうか?
無意識な青春時代
「青春」とは、生涯を通じて若くて元気がある時代を指す。言葉にある通り、季節は「春」を意味する。青という字も使われていることから、春でも割と早い時期、桜がまだ咲く前の時期を表すものだろうか。
青春には限りがあり、毎年訪れる「春」とはそこが大きく異なる。歳を重ねても春は春だし、今年訪れた春は来年も訪れる。しかし、高校生の時の青春は大人になってからは訪れない。こんなことはみんな知っていることなのだが、そもそも「青春」という言葉自体が抽象的であるため、今現在、青春のど真ん中にいることを意識することができない。
青春は年齢でいうところの、15歳から22、23歳くらいまでだろうか。この期間のことを青春と呼ぶことはなんとなくわかっている。しかし、青春って何?という疑問には明確に答えることができない。
青春には友達が付き物なのだろうか?青春には恋人は必須なのであろうか?青春は屋外で発生することが多いのだろうか?これらの暗黙の条件みたいなものがほのかにあるおかげで、青春なんてものに出会わなかったと振り返る大人が多い。
結局、若いうちはいろんなことが怖がらず挑戦できることから、「あの頃は、色々やったなー」を総して「青春」と呼ぶのだろう。その証拠に「青春」という言葉は「若気の至り」と近いものがある。
「止まない雨はない」
「止まない雨はない」という言葉がある。辛くてしんどい時期があってもそこを乗り越えることによって成長した自分に出会える。雨は降るのだが、いつかは晴れる。つまり、現状に一喜一憂するのではなく、未来を見据えてポジティブにいこうということである。
しかし、逆説的な考え方をしてしまうと、今晴れていてもいつか雨が降るということでもある。いつか降り始める雨に向けて、メンタルの準備をしておく必要がある。誰もが生まれてから死ぬまで順風満帆に生涯を遂げることはできない。どこかのタイミングで壁にぶつかったり、自我を保てなくなってしまうほどの経験をするものである。
そこで自分だけがこんな人生を送ってしまっていると思わずに、みんながそれなりに苦労をしていると思うことが大切である。人生において、主観的に見ることと客観的に見ることのバランスがとても重要になってくる。
例えば、自分の評価を主観的に見すぎてしまうと、世間とかけ離れた人間になってしまう。誰も自分のことを理解してくれないだとか、自分の良さをわかってくれないなど、世の中に対する不満が積もってくる。ある程度、客観的に自分の姿を見ることで自分に足りない部分が理解できてくる。
一方で、他人の目を気にしすぎてしまうことや、他人と比較をしてしまうこともマイナスな要素としてある。友人知人は何歳の時にはすでに結婚をして子供までいるだとか、会社の同期は出世して自分は取り残されてしまっているなど、他人と比較をしてしまうとあまりいいことはない。そこは主観的に考え、自分がやっていることに誇りを持つことが大切だ。
いずれにしても「止まない雨はない。だがまた雨は降る」人生の中で、どこに力を入れ、どこで力を抜くかを意識することで辛い時期をやり過ごすことができる。雨が降っていたら家でダラダラ過ごせばいい。晴れ渡った空の下では自然と体が動き出す、かもしれない。
まとめ
今回は小説『殺人者』望月 諒子著のご紹介でした!
”承認欲求、毒親、嫉妬”人間の心に潜む深い闇をストーリーを追うごとにじわりじわりと浮き出てくる、そんな作品でした。
様々な登場人物の心情に触れることで、かなり心のカロリー消費が激しい感覚がありました。しかし、ミステリとしての今後の展開へのワクワク感も十分にあったため、割と短い期間で読み終わりました。
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