今回は小説『パレード』吉田 修一(著)のご紹介!立ち寄った書店で「幻冬舎文庫 冬の読書フェア」が開催されていて平積みされていました。こちらの作品は映画化もされていて、私は以前途中まで見たことがありました。。。。。
男女がマンションの一室で共同生活をする物語で、個性豊かなキャラクターによって現実離れした出来事が起こっていきます。登場人物の個性的な考え方も物語に引き込まれるエッセンスとなっています。
書籍の情報を以下にまとめます▼
INFO
タイトル:『パレード』
著者:吉田 修一
出版社:株式会社 幻冬舎
発売日:2004年4月10日(初版発行)
メモ:第15回山本周五郎賞受賞作
こちらの書籍を購入した際の記事もご覧ください▼
あらすじ
都内の2LDKマンションに暮らす男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、”本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め・・・・・・。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作。
『パレード』裏表紙より
読書感想
主導的決断と受動的決断
人生は決断の連続であり、その決断は日常の些細なものから、人生の方向性を大きく変えるものまで様々である。多くの人々は、自分の感情や願望を基に決断を下す。自分がどうなりたいか、何を経験したいかという内なる声に従って、その一歩を踏み出す。これは、自己実現への道を切り開くための自然なプロセスである。
しかし、一方で、他人の目や評価を重視して決断をする人々もいる。彼らは、他人から羨ましがられたい、あるいは社会的な地位や評価を高めたいという外部からの圧力や期待に応えようとする。このような決断は、他人の知り得ない感情や価値観に基づいており、時には自分自身の本当の願望や幸福とは異なる方向に導かれることもある。
この二つのアプローチは、人生の決断において対照的な動機を示している。自分自身の内なる声に従うことは、自己実現と個人的な満足感につながる。一方で、他人の目を意識しすぎることは、自分の本当の幸福を見失うリスクを伴う。重要なのは、自分の決断が自分自身の真の願望と価値観に基づいているかどうかを見極め、自分にとって最善の選択をすることである。
時にしつこい己の感情
人間の感情は多様で複雑であり、その反応もさまざまである。楽しい時や嬉しい時は、その感情に身を任せて突き進むことが多い。このようなポジティブな感情は、私たちを前向きにし、活動的にさせる。この時、私たちは感情を深く掘り下げたり、その意味を考えたりすることは少ない。ただ純粋にその瞬間を楽しむことに集中する。
一方で、悲しみや苦しみといったネガティブな感情に直面した時、人はしばしばその感情に向き合い、時にはそれに飲み込まれてしまう。このような感情は、私たちを停滞させ、深い思索に陥らせることがある。悲しい時や苦しい時には、なぜかその感情を深く掘り下げ、その原因や意味を考えてしまう。これは、ネガティブな感情が私たちにとって不快であり、その原因を理解し、解決しようとする本能的な反応かもしれない。
しかし、ネガティブな感情に対しても、ポジティブな感情の時と同様に、感情に身を任せて前に進むことが、時にはより良い対処法となる場合がある。感情に向き合うことは重要だが、それに囚われすぎることなく、前向きに進むこともまた、感情の健康的な管理において大切なことである。感情に振り回されるのではなく、それを受け入れつつも、前に進む勇気を持つことが、人生を豊かにする鍵となる。
親しい人の顔が浮かばない
どんなに親しい関係であっても、家族を含め、24時間365日一緒に過ごすことは不可能である。この事実から、親しい人であっても完全には理解しきれない部分が存在することになる。人間関係を築いていく中で、私たちは無意識のうちに、見たくない相手の側面を見過ごしたり、意図的に無視したりすることがある。これは、不快な真実を受け入れることの難しさや、関係を円滑に保とうとする心理から生じる。
その結果、私たちが他人に対して持つ印象や認識は、実際の相手の全貌を捉えているわけではなく、限定的なものとなる。さらに、私たちは自分の好みや価値観に基づいて相手を見るため、その認識は主観的に着色されてしまう。これは、自分にとって都合の良いように相手を解釈し、理想化する傾向にもつながる。
このように、人間関係においては、相手を完全に理解することは困難であり、私たちの認識は必ずしも客観的な真実を反映しているわけではない。この認識の限界を理解し、相手に対して柔軟な姿勢を持つことが、健全な人間関係を築く上で重要である。相手の多面性を認め、自分の認識に偏りがあることを自覚することが、より深い理解と共感への第一歩となる。
まとめ
吉田 修一(著)の『パレード』は、現代社会の孤独と繋がりを巧みに描いた作品です。この小説は、一つのアパートで共同生活を送る五人の若者たちを通して、それぞれが抱える秘密や葛藤、そして彼らの間に生まれる微妙な関係性をリアルに描き出しています。
ただの青春小説にとどまらず、現代を生きる私たち一人一人が直面している問題を鋭く突きつけています。この小説を読むことで、私たちは自分自身と向き合う機会を得るとともに、他者との関係性についても改めて考えさせられます。
コメント