今回は小説『迷路館の殺人』綾辻 行人(著)のご紹介!
綾辻 行人さんの「館シリーズ」。これまでに『十角館の殺人』を読んできました。特にストーリーの流れを気にせず気になった作品を手に取りました。
『十角館の殺人』は動画サイトHuluで映像化がされました。そして、今年、「館シリーズ」の中からまた映像化がされるとのこと。どの作品が映像化されるかはまだ明かされていません。それゆえにどの作品が映像化されるのかを想像しながら読むのも面白いかもしれません。
書籍の情報を以下にまとめます▼
INFO
タイトル:『迷路館の殺人』
著者:綾辻 行人
出版社:株式会社 講談社
発売日:1992年9月
メモ:「館シリーズ」の三作目
『十角館の殺人』の感想記事はこちら▼
あらすじ

奇妙奇天烈な地下の館、迷路館。招かれた四人の作家たちは莫大な”賞金”をかけて、この館を舞台にした推理小説の競作を始めるが、それは恐るべき連続殺人劇の開幕でもあった!周到な企みと徹底的な遊び心でミステリファンを驚喜させたシリーズ第三作、待望の新装改訂版。初期「新本格」を象徴する傑作!
『迷路館の殺人』裏表紙より
読書感想

端正な顔立ちのやつに対する考察
端正な顔立ちのやつがいる。ちらっと私の視界に触れただけなのに他の人とは違うオーラのようなものを感じてしまう。思わず二度見してしまったがそれを悟られないように目線をゆっくりと切る。端正な顔立ちのやつは、私のちょっと違和感のある行動に意識したが、そんなことは日常茶飯事といったような態度だ。
言葉ではうまく表せられないそのオーラは、私だけでなく、道ゆく人々並びに今そいつと話をしている友達らしき人も気がついているだろう。話している際の笑顔が引き攣っている。無理に笑おうとしているのは相手に気を遣っている証拠だ。
気に入られることを目的としたリアクションは、はたから見るととても滑稽に映る。私は万引きGメンさながら、事実を知る使者としてその光景を眺めている。この私の端正な論理は自分が納得するだけの説得力を持っていた。
端正な顔立ちのやつがこっちを見た。瞬時に目を切ることができなかった私は諦めの気持ちとちょっとした好奇心を持ちながら彼の目を見つめ続けた。すると彼は口角をあげ、私に笑いかけてきた。彼の銀歯がきらりと光っていた。
しんどい時の日記は長い
平凡な毎日を送っているとふと不安を感じることがある。自分の人生ってこんなつまらないもので良いのだろうか?これから先、何年もこんな生活なのだろうか?そんな時、私は忙しさを求めてしまう。多忙な仕事。家に帰るのは日付が変わる寸前。お風呂に入って寝るだけ。そんな生活に憧れを抱いてしまったり。
お望み通りの生活が始まった。ひょんなことから仕事が多忙になり、家に帰るのは深夜。自宅で晩御飯を食べるのも最近はしていない。お望み通り、お風呂に入って眠るだけ。体の疲れよりもまず、心の疲れに襲われる。こんな生活に憧れを抱いていた自分が馬鹿みたい。
大学生の頃から毎日つけている日記。何気ない毎日は1行の文章で片付けられる。心が疲れている時ほど、日記の文章は多くなる。手のひらサイズのノートの1ページがもう埋まってしまった。頭で考えている言葉たちをペンで書くスピードが間に合わない。
歩くスピードに正解はない
芸術とは決まりがない。美術館に飾られている絵は上手いという評価で値ぶみされていない。その絵を見てどう感じるかはその絵を見た人次第。パワーを得る人もいれば、ちらっと見ただけで通り過ぎてしまう人もいる。
人によっては、展示されている絵の下に書かれている解説文を腰を屈めながら丁寧に読む人もいる。芸術を感じるよりも知識に重きを置いているのかもしれない。世界中のそしてかなり昔に書かれた作品が現代の私たちの目の前に存在するという光景は、よく考えてみると不思議である。解説文を読むことによってその不思議さを際立たせる効果もあるのかもしれない。
美術館という場所は、人々の歩く速さに最も種類がある場所と言っても過言ではない。ゆっくりと鑑賞を楽しむ人がいる一方で、品川駅か!と突っ込みたくなるくらいのスピードで駆け抜けていく人もいる。おそらく、美術館という場所に来た時点で目標は達成しているのだろう。
どんな鑑賞スピードであれ、「この前、モネ展に行ってきたんだよ」には変わりはないのだから。
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