今回は、小説『常設展示室』のご紹介。
著者は美術系小説で有名な原田マハさんです。
「常設展示室」とは、大々的に行われる展示会とは違い、その美術館に常に展示されている。
いつ訪れても鑑賞することができる作品のことを指します。
美術館は人を選ばず、誰もが楽しめる場所として存在しています。
書籍の情報を以下にまとめます▼
INFO
タイトル:『常設展示室』
著者:原田 マハ
出版社:新潮文庫
発売日:2021年11月1日(発行)
メモ:作品は6篇の短編集
次に収録されている短編作品の一覧を以下にまとめます▼
収録作品
△ 「群青 〜 The Color of Life 〜」
△ 「デルフトの眺望 〜 A View of Delft 〜」
△ 「マドンナ 〜 Madonna 〜」
△ 「薔薇色の人生 〜 La vie en rose 〜」
△ 「豪奢 〜 Luxe 〜」
△ 「道 〜 La Strada 〜」
こちらの書籍を購入した際の記事もご覧ください▼
あらすじ
いつか終わる恋をしていた私。不意の病で人生の選択を迫られた娘。忘れられないあの人の記憶を胸に秘めてきた彼女。運命に悩みながら美術館を訪れた人々の未来を、一枚の絵が切り開いてくれたーーーーー。足を運べばいつでも会える常設展は、今日もあなたを待っている。ピカソ、フェルメール、ラファエロ、ゴッホ、マティス、東山魁夷・・・・・・実在する6枚の絵画が物語を豊かに彩る、極上のアート短編集。
『常設展示室』裏表紙より
読書感想
絵画の前に立つ
世の中、本物を知ることで得ることがたくさんある。
一流のプレーを知るためにプロスポーツを生観戦する。
一流の音色を知るためにコンサートを鑑賞する。
美術館もその一つである。
しかも美術館は手頃な値段で世界中の本物を目の当たりにできる。
絵画にはさまざまなジャンルが存在する。
どのジャンルに心打たれるかは人それぞれである。
ある絵画の前で足が止まる。
まずは絵画全体を満遍なく眺める。
そして今度は、絵画の隅々まで目を凝らす。
頭の中は自然と絵画の世界に入り込む。
細かなタッチから画家の息遣いを感じ、その時代の匂いを香る。
自分の後ろには、作品をチラッと見て通り過ぎる人たちがいる。
奥には人だかりができている。
みんなの目当てはその作品である。
だけど私は前にある作品から去ることができない。
この感情は一目惚れと似ているのだろうか?
本物を目にすることで、新たな自分を知った。
鑑賞スタイル
一つの作品を観たとき、その作品に対する感想は人それぞれである。
その作品によって人生観までもが変わってしまう人もいる。
美術館で絵画を鑑賞する際、他人の感想にケチをつけることはマナー違反である。
もとより、絵画の知識や美術館を訪れる数が多い人の方が感想の深みは多いかもしれない。
ただ、美術にそこまで関心がない人が感じる感想には別の良さがある。
何色にも染まっていないキャンバスに鮮やかな色が初めて塗布されたように。
純粋で、濁りのないその感想は、数を重ねた美術愛好家には出せないものである。
どのような分野においても知識をつけることによって、知識に溺れることがある。
そういう人は共通して、頭で語る。
一方、美術の素晴らしさに気がつき始めた人は、感情で語る。
素直な感情から生み出される感想こそが、本来の鑑賞スタイルである。
常設展示室
「常設展示室」
その美術館に常に展示されている作品。
メディア等で大々的に広告が打たれる展覧会とは異なる。
目当ての作品があれば、いつでも鑑賞することができる。
美術館は来るものを拒まず、常に門扉を開けている。
常設展示室に展示されている作品はその美術館を住処とする。
華やかさよりもその場に佇むどっしりとした雰囲気を纏って、来る人を出迎える。
美術館を訪れる人からすると、いつ訪れても待っていてくれる作品があることは安心感を覚える。
こちら側の気まぐれに嫌な顔せずに応対してくれる恋人のように。
熱し易く冷め易い恋というよりかは、一定の温かさを持つ愛情に近いか。
常設展示室は世界中の美術館に存在する。
見ず知らずの土地に足を踏み入れたとき、人は寂しさや不安を抱く。
今の不安定な気持ちをどうにかして落ち着かせたい。
そんな時でさえ、美術館の常設展示室はいつもと変わることなく存在する。
いつもと変わらず輝いている作品を前にしたとき、温かく包まれるような感覚を味わう。
異国の地でさえ、そっと寄り添ってくれる存在がそこにはある。
まとめ
美術館に絵画を鑑賞しに行くきっかけはメディア等による大々的な広告による影響が多い。
世界的に有名な画家の有名な作品。
それは誰だって観てみたいものである。
しかし、美術館は年間を通して開かれている。
私たちは行きたいときに足を運ぶことが可能だ。
美術館の常設展示品はいつだってそこにある。
今回、『常設展示室』原田マハ著を読んで、美術館の当たり前を知った。
美術館は常に開かれていて、誰でも好きなときに訪れることができる。
訪れる人はさまざまな感情を抱いている。
自分もその一人であり、絵画に何かを求めて足を運んでいる。
もっと気軽に、赴くままに訪れたい場所である。
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