『思考の整理学』外山 滋比古

エッセイ

本日は、エッセイ『思考の整理学』外山 滋比古著のご紹介。
この作品は現在、260万部を超えるベストセラー書籍。
1986年に文庫化されたが、2007年から急激に売り上げを伸ばした。

その理由は、東大・京大内にある生協での書籍売上が1位になったことにある。
そこから「東大・京大で一番読まれた本」とのフレーズが生まれた。

東大・京大生に最も読まれた本と聞くと、難解な本という印象を抱く。
しかし、そもそもこの本は「思考を整理するためにある本」である。
難しそうな情報にどうアプローチしていけばいいのかが学べる。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『思考の整理学』
著者:外山 滋比古
出版社:ちくま文庫
発売日:1986年4月24日(第1刷発行)
メモ:東大・京大で1番読まれた本

書籍情報

アイディアが軽やかに離陸し、思考がのびのびと大空を駆けるには?
自らの体験に則し、独自の思考のエッセンスを明確に開陳する、恰好の入門書。
考えることの楽しさを満喫させてくれる本。
文庫本のあとがきに代わる巻末エッセイ”「思われる」と「考える」”を新たに収録。

『思考の整理学』裏表紙より

読書感想

ラブレターは届かない

みなさんは、ラブレターを書いたことはあるだろうか?
今の時代、紙(便箋)に文字を書くという習慣はあまりない。
そのため、ラブレターと言ってもメールやチャット(DM)類か。

ラブレターを拵える場面を想像すると、決まってである。
卓上にある間接照明の明かりを頼りに文字を連ねる。
相手のことを思って書く文章は思いのほかすらすらと浮かんでくる。

メールの世界に生きる現代人は、どのタイミングでも相手に送ることができる。
しかし、紙(便箋)に書いたラブレターはそうはいかない。

自分が運び屋となって送り届けないといけない。
「明日の朝、学校で渡そう」こうなるのである。

翌朝、机の上には綺麗に畳まれたラブレターがそこにある。
あの子に渡す前に一応読み返してみようと、ラブレターを開いて読む。
5行と読まないうちにまた閉じる。

夜に書いたラブレターは届かない。

本当に自分が描いたのかと疑ってしまうような文章。
夜という時間帯は、思考の毛穴が一斉に開く時間。
まさに脇目も振らず書き切ってしまうのだ。

それだけ夜の考えと、朝の考えは違う。
夜は感情的、朝は現実的
様々な感情が入り混じった思考は、複雑でまとまりがない。

その上、際限なく考え続けることができてしまう。
気がついたら外が明るくなってきた、なんてこともある。

何かに思い悩んでいるときは、早く寝てしまうのがいい。
陽が落ちるのと同じタイミングで思考のスイッチをゆっくりと切っていく。
そして、また陽が昇ってくるタイミングで思考のスイッチをゆっくりつけていく。

忘れることの重要性

これまで、優れた人というのは記憶力のある人だったそうだ。
学校での定期テストも、受験にしても全ては記憶力に懸かっている。

いい大学に入れば、いい会社に就職ができる。
いい会社に入ることができれば、人生もうまくいく。
こう思われてきたのだから、記憶力というものは馬鹿にはできない。

しかし、時代は変わった。
コンピュータという、人間よりも遥かに記憶力のいいものが現れてしまったからだ。
「記憶力がいい人=優れた人」、この考え方が崩れ始めた。

これからの時代はどういった人が優れた人となるのだろうか?
その第一歩がまさに「忘れることの重要性」である。

ただでさえ現代は、情報過多の時代。
全ての物事に精通する姿勢だと頭がパンクしてしまう。
だからこそ、思い切って忘れるのである。

忘れること、知らないことは恥じるべきことではない。
知らないことがあったり、忘れてしまったことがあったら、人に聞けばいい。
これがコミュニケーションである。

コミュニケーションは、これからの時代で優れた人を判別するファクターとなる。
コミュニケーションの機会を増やす手っ取り早い方法は、何か人に質問することである。
だから忘れることが重要なのだ。

「自分にとって大切なことを忘れてしまってもいいのか?」と疑問を持つだろう。
大丈夫である。
なぜなら、自分にとって大切なことは、何度も知識習得の機会が訪れる

知らない間に重ねた反復作用によって、知識として定着していく。
むしろ反復しないことには知識は定着しない。
自分にとって大切でないことは、忘れた以降、二度と現れることはない。

共通の趣味は持たない

男女の関係において、共通の趣味を持つことは仲の良さを深めるエッセンスとされている。
確かに共通の趣味を持てば、休日の過ごし方にも迷わずに済む。
楽しい時間を共に過ごすことはいいことである。

しかし、仲の良さに亀裂が生じるのも共通の趣味が原因だったりする。
趣味を持つことでそのことに関する知識が付く。
知識を得ると人は趣味のレベルを上げていく。

この趣味のレベルを上げていく時に、その人固有の思いが顔を出す。
例えば、ソロキャンプ
ソロキャンプは、一人で必要最低限の道具を持って行くキャンプである。

キャンプと言ったら大人数でワイワイ楽しくやる。
一般的な考え方を逆手に取った形で人気を博した。
ソロキャンプが趣味な男女が付き合った時、二人は一緒にキャンプに行くのだろうか?

理想としては、それぞれ別のキャンプ場にソロキャンプに行くことである。
しかし、キャンプという共通の趣味で繋がった二人の場合、一緒に行きたい気持ちが出てくる。

このようになった時、どこまで相手の流派を尊重できるかが問題である。
焚き火をぼーっと眺めるのが好きな彼女と、ビール片手に語り合いたい彼氏とでは馬が合うわけがない。

知識があるからこそ、相手のことを否定することができる材料が揃ってしまう。
趣味は趣味で楽しいのだから、わざわざ一緒にやることもない。
それでも一緒にやりたいのなら、一から趣味を見つけることだ。

まとめ

人間は、知らないものに出くわした時、それを覚えようとする。
記憶力がいい人はそれだけで優れた人になることができる。

しかし、知識の定着には忘れることが重要であった。
自分にとって大切なことは、たとえ忘れたとしてもあちらからまたやって来てくれる。
その繰り返しで知識は不動のものになる。

このプロセスを理解しておかないと将来、困ったことになる。
必ず記憶の限界が訪れるからだ。
また、どう頑張ってもコンピュータには勝つことができない。

読書愛好家にとって、忘れても構わないという言葉ほど、ありがたいことはない。

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