【独自感想】『爆弾』呉 勝浩

小説

今回は小説『爆弾』呉 勝浩著のご紹介。
このミステリーがすごい!」「ミステリが読みたい!」で2冠を達成。

「爆弾」というタイトルからも、爆弾による事件が物語の柱になるのは想像できます。
しかし、あまりにもシンプルなタイトルなだけにストーリー展開が気になるポイントです。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『爆弾』
著者:呉 勝浩
出版社:講談社
発売日:2022年4月18日(第1刷発行)
メモ:「このミステリーがすごい!」「ミステリが読みたい!」で2冠

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あらすじ

微罪で逮捕された男が、秋葉原の廃ビルで起きた爆発を”予言”した。あと二度あるという爆発を止めようと詰め寄る刑事。だが、男は巧みな話術でその正体すら掴ませない。そんな中、男が口にしたのは四年前に自殺した刑事の名前。警察が目を背けてきたそれが、事件を紐解く鍵か。タイムリミットが次々迫る中で巻き起こる、男と警察の頭脳戦。息をもつかせぬノンストップ・ミステリー!

『爆弾』裏表紙より

読書感想

情報と付き合う

SNSが発達したことによって便利な世の中になった。
その一方で窮屈にもなった。
知らなくてもいいことを知ってしまうことにもなった。

誰でも簡単に情報を発信することができる社会は、
自ら墓穴を掘る人が続出する
地盤がゆるゆるでどこまでも掘り続けられる。

今までは社会の仕組み上、せき止められていたくだらない情報も
拡散され、赤の他人の元へ届けられてしまう。
情報を貰いにいくのではなく、情報の方から駆け寄ってくるのだ。

そんな情報はいらないからどっか行ってほしいと思っても
情報は親友のように歩み寄ってくる。

不幸なのは、本当に必要な情報は未だにこっちから歩み寄らなければならない
情報の世界でも、好みの相手に振り向いてもらうためには努力が必要みたいだ。

ダダ漏れの情報社会の中で自ら墓穴を掘った人は、世間を騒がす。
しかし世間がその人に注目を集めるのはごく限られた時間だ

本音と建前

人と接している自分と、人と接していない自分は全くの別人である。
接していない自分とは、心の中の自分である。
実際、言葉で発している内容と正反対のことを心の自分は考えていたりする。

例えば、先輩に呑みに誘われた時、「行きます」と言った自分に対して、
「お前となんか行きたいくない」と心の自分は言っていたりする。

どっちが本当の自分なのかと疑問に思うのだが、どっちも本来の自分なのだろう。
仮に人と接している自分と、接していない自分が入れ替わってしまったらどうなるだろう。
みんなから嫌われるだろうと思う人は少なくないはずだ。

それくらい、心の中の自分はブラックであり、冷めている
世界中のどこかで起きている大事件を知っても平気な顔をして次の日を迎えられるのは
心の中の自分がいるからだ。

そうでないと、見ず知らずの人の不幸を真正面から受け止めてしまう。
見ず知らずの人の不幸は世界中、毎日のように起こっている。
とてもではないが、メンタルを正常に保ち続けることはできない。

すなわち、本音と建前は人間にとって必要不可欠な要素であり、
人間という生き物が形成される過程で備えられるものなのかもしれない。

規則からはみ出す勇気

社会の決まりは円滑で平和な世の中を生み出すために作られたものだ。
大なり小なり、社会にはさまざまな規則が設けられている。

中にはちょっとやりすぎではないかと思わせる規則もあるわけだが、
大方の規則は、なぜそのような規則を設ける必要があるのかが明確にあり、
またその理由に納得させられる。

そのような規則を破るということはよっぽどのことである。
破るなりの明確な理由も必要になってくる。

さまざまな協議を重ね設定された規則を破ることは困難だ。
理由を考えても完璧に筋を通すことはできない。
しかし、「破らないといけないのだ」という考えもそこには存在する。

ここまでやってくると、最後に必要なのは規則を破る「勇気」ということになる。
破った後に訪れるであろう苦難の道を想像した上で、その勇気が勝るのか。
前へ踏み出したらもう後に戻ることはできない。

このやるか、やらないかの2つの選択に人は躊躇いを感じ、
やらない道を選んでしまう人がたくさんいる。

やらない道を選んだ人は、のちに語り継がれることはない。
そんな人がいたことすら記憶/記録にも残らない。
語り継がれる人はみんなやった人たちなのだ

まとめ

今回は小説『爆弾』呉 勝浩著のご紹介でした。
大事件であればあるほど、それを引き起こす人の感情は複雑になります。
それを一つ一つ紐解いていくことで真実に辿り着くことができる。

しかし、紐解いたからといってそれが理解できるとは限りません。
理解ができないからこそ、この人は間違った方法を取ってしまったのだと思うこともできる。
一つの事件を皮切りに様々な感情が蠢く、そんな作品でした。

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