今回は小説『G線上のアリア』湊 かなえ(著)のご紹介!
お互いの家の家事を交換してみるお話。他人の家の中を覗くような感覚があって、少し興味を持つ人もいるのではないでしょうか?しかし、なぜお互いの家の家事を交換することになったのか。その理由は単純なものではありませんでした。
書籍の情報を以下にまとめます▼
INFO
タイトル:『G線上のアリア』
著者:湊 かなえ
出版社:朝日新聞出版
発売日:2025年2月
メモ:介護ミステリ
あらすじ

誰もが家族に言えない「人生」という物語がある
中学生の時に両親を事故でなくした美佐は、叔母に引き取られ、高校時代を山間部の田舎町で過ごす。それから約30年、叔母に認知症の症状が見られると役場から連絡があり、懐かしい故郷を訪れる。かつて、美しく丁寧に暮らしていた家はゴミ屋敷と化していた。片付けを進めていくと、当時の恋人から借りた本を見つける。あったかもしれない未来を覗き見るような思いで、本を返しに行った美佐は、衝撃的な場面を目撃する。
担い手となった女性たちの心の声が響く介護ミステリ『G線上のアリア』裏表紙より
読書感想

焚き火の魔力
私の恋愛テクニックを紹介する。それは、好きな人ができたらキャンプに誘うことだ。かなりハードルが高いかもしれないが、最近はキャンプ人気も高まっているせいもあって、複数人のキャンプであれば気軽に誘うことができる。
キャンプに慣れている自分の姿を気になる相手に見せることで好印象を与える。いや、そういうことではない。私は普段、とてもシャイな人間だ。そんな私にも好きな人はできたりもする。その際、二人っきりでお酒を飲みに行ったこともあるし、映画に誘ったこともある。
だけどシャイな私は好きな人を目の前にしてしまうとなかなか会話を続けることができない。そんなある時、友達の誘いで複数人のキャンプに出かけた。すると、友達の知り合いとして参加してきたある女性に一目惚れをしてしまった。
初対面ということもあり、なかなか喋ることはできなかったのだが、夕食後、焚き火をぼーっとしながら眺めていると、その女性の方から話しかけてきた。面食らった私は、女性の顔を見ることができず、焚き火を見ながら話をした。
普段であれば、相手の顔を見ずに会話をし続ける行為は、失礼な印象を与えかねない。しかし、キャンプの焚き火の前となれば、焚き火を眺めながらの会話は成立する。しかも相手の目を見て話す必要がないため、普段は言えないような話も抵抗なく話せるのだ。今では焚き火セットが家に4つもある。
歯を磨くタイミング
午後6時半ごろに帰宅した。リビングに入ると夕飯のいい匂いがする。夕飯の前にお風呂に入ってくると妻に伝えて風呂場へ向かう。今日は少しお腹が空いていたので、湯船に浸かる時間は短めに。お風呂から上がった私は乾燥を防ぐために乳液を塗る。そして歯を磨く。
これから夕食だというのに歯を磨く。この行動に対して妻からも不思議に思われたことがある。歯を磨くと口の中が歯磨き粉によってスーッとする。歯磨き粉の味も多少残る。そのような状態でご飯を食べることが理解できないらしい。
だけど私としては、お風呂に入って体や頭を洗ったのなら、「歯も洗いたい」そんな感覚なのだ。身体を洗ったのに歯を洗わないことの方がなんだか気持ちの悪さを感じてしまう。たとえこの後すぐに晩御飯だとしてもそれは変わらない。
一度、じゃあ、お風呂に入る前に晩御飯を食べればいいじゃないと妻に言われたことがある。確かにそっちの方が効率的なのかもしれない。結局、風呂上がりに歯を磨いたところで、晩御飯を食べたらまた歯を磨く必要があるから。お風呂に入るのを晩御飯の後にスライドさせることで歯を磨く回数も一回で済む。
そんな効率的な生活を私はしたいわけではない。感情に素直で、入りたい時に風呂に入り、磨きたい時に歯を磨き、食べたい時に晩御飯を食べる。それでいいじゃないか。
罪深さ
私は小学生の頃、自分の顔を馬鹿にされた経験がある。なんてことはない普通の顔なのだが、たまたまくしゃみをしたタイミングを見られてしまい、その顔がおかしかったのだとか。そんなことがきっかけで終わりのない顔いじりが開始された。
見方によってはそれはいじめだったのかもしれない。だけど当時の私は自分がされていることをいじめだとは思っていなかった。ある時、大人たちにいじめられているのではとしつこく聞かれたこともあったが、私は首を縦に振ることはなかった。
結局いじめというのはされる側の人間が判定するものだったようで、頑なに認めない私に対してその後、再度心配する大人はいなくなった。
しばらくすると、私の顔いじりも終わりを告げた。それが終わったからといって私に関する何かがわかったことはない。ただ、顔いじりの標的が変わったようだ。同じクラスの女子。理由はわからないが以前の私と同じようないじられ方をしていた。
ある日、私はふとした拍子にその子の顔いじりに対して笑ってしまった。自然と出てしまった笑みだった。するとその女子は初めて感情を露わにし、私のもとに駆け寄ってきた。「あんたが私をいじるのは他の人よりも罪深い」と私に告げてその子は教室を後にした。
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