『ハグとナガラ』原田 マハ

小説

今回は小説『ハグとナガラ』原田 マハ著のご紹介。
原田マハといえば、自身もキュレイターであることから美術系の小説が多い。
しかし、今回紹介する『ハグとナガラ』には美術は登場しない。

この小説は、大学からの友達である「ハグ」と「ナガラ」にまつわる物語。
仲のいい二人が一緒に旅行(旅)をする。

お金にも時間にも余裕がある時は何も気にすることなく行けていた二人旅
だが、お互いに歳を取ると仕事でもプライベートでも立場が変わってくる。
そんな人生の変化を旅行(旅)の視点から描かれた作品。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『ハグとナガラ』
著者:原田 マハ
出版社:株式会社 文藝春秋
発売日:2020年10月10日(第1刷)
メモ:美術小説で有名な著者が描いた旅小説

あらすじ

恋も仕事も失い、絶望していたハグ。突然、「一緒に旅に出よう」と大学時代の親友ナガラからメールが届いた。以来、ふたりは季節ごとに旅に出ることに。気がつけば、四十路になり、五十代も始まり・・・・・・・。人生の成功者になれなくても、自分らしく人生の寄り道を楽しむのもいい。心に灯がともる六つの旅物語。解説・阿川佐和子

『ハグとナガラ』裏表紙より

読書感想

人生を足掻く

幸せな人生を歩むためには何を意識すればいいのだろうか?

その人によって幸せな人生の定義も変わってくる。
バリバリ働いてお金を稼ぐのが幸せだと感じる人もいるだろうし、心躍る瞬間は少なくても心穏やかに生活できることが幸せだと感じる人もいるだろう。

ただ、いずれにしても幸せを手にするためには人生を足掻く必要がありそうだ。
小さなことでも今と違ったことをするというのには、体力を使う。

目的とするゴールが穏やかな生活であっても、その道すがらは荒れてたりする。
だから人は幸せを手にするために必死になるのかもしれない。

逆に幸せを諦めた場合はどうなるのか?
なるようになれ、自分の人生なんでどうでもいい。
そこまで思うことができても、相変わらず人生は続いていく。

すると人間は人生を足掻きたくなっていく。

一人旅と二人旅

一人旅と二人旅。
訪れる場所が同じでも訪れた後の感想は全然違うのだろう。

一人旅の場合、全ては自分視点となる。
景色、料理、雰囲気、、、、、。
旅から受ける感情は自分だけのフィルターを通して表現される。

一方、二人旅は相手の感情もそこに加わる。
5感という表現があるが、二人旅の場合は10感となるわけである。
自分とは違う感想を聞くだけで物事の視野が広がり、それが旅のスパイスとなる。

ならば、旅は二人(複数人)で行ったほうがいいということか。
二人で行ったほうが旅のスパイスも相まって充実したものとなる。

しかし、当然のことながら世の中には一人旅をこよなく愛する人も多くいる
一人になるメリットは、他人を気にする必要がないことだ。
高いコミュニケーション力を求められる現代において、一人になる時間を欲している人は多いのではないか。

むしろ、一人旅の需要はどんどん伸びている。

帰省

久しぶりに実家に帰ることもの一つである。
長い間帰省していないとなおさらだ。

自分が生まれ育った地域も時間の経過とともに姿を変えていく。
変化した地元の姿にどこか寂しさも感じつつ、慣れ親しんだ顔と再会する。

帰省とは字の如く、「帰る」ことを意味する。
しかし、大人になってからの帰省は帰るというより行くに近い。
どっちが行って、どっちが帰るのか、ややこしい。

「実家に帰る」と言って帰省をし、「それじゃあ帰るね」と親に伝えて普段の自宅へと向かう。
言葉の表現はとても難しい。

逆に「帰省」や「帰る」という言葉を迎え入れる側の視点で考えてみる。
誰か大切な人が帰ってくる。
このように考えることで「帰る」という言葉は一方通行となる。

実家にカエルの形をしたお守りがある。
「無事に帰ってくる」という願いが込められているらしい。

まとめ

時間にもお金にも余裕がある時は年に何度か行く旅行も通例行事に過ぎない。
そこに制約が現れて、当たり前だと思っていたことができなくなった時、特別なことだと気がつく。

若いうちには叶わないことも、大人になると叶えられることがある。
しかしその一方で、大人になってしまったがために叶えられないこともある。
このバランスはとても難しい。

「今を楽しむ」という言葉があるが、小説『ハグとナガラ』を読むと痛感する。
楽しみを後にとっておくと、結局やらずに時間だけが過ぎてしまうことがある。
「今を楽しむ」ことを意識することで、常に過去最高な時間を味わうことができる。

Amazonからの購入はこちら▼

コメント