『犯罪者』太田 愛

小説

今回は小説『犯罪者』太田 愛著のご紹介。
上・下巻にまたがる大作は、とても読み応えのある作品でした。

表紙を並べると優しく微笑む女性と子供の絵が。
子供の表情を捉えることはできませんが、
この2人が作品の中でどのような役割を果たすのか、気になるポイントです。

Amazonからの購入はこちら▼

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『犯罪者』(上・下巻)
著者:太田 愛
出版社:角川文庫
発売日:2017年1月25日(初版発行)
メモ:次々と状況が二転三転する怒涛のミステリー

こちらの書籍を購入した際の記事もご覧ください▼

あらすじ

『犯罪者』上巻

白昼の駅前公園で4人が刺殺される通り魔事件が発生。犯人は逮捕されたが、ただひとり助かった青年・修司は搬送先の病院で奇妙な男から「逃げろ。あと10日生き延びれば助かる」と警告される。その直後、謎の暗殺者に襲撃される修司。なぜ自分は10日以内に殺されなければならないのか。はみだし刑事・相馬によって命を救われた修司は、相馬の友人で博覧強記の男・鑓水と3人で、暗殺者に追われながら事件の真相を追う。

『犯罪者』上巻より

『犯罪者』下巻

修司と相馬、鑓水の3人は通り魔事件の裏に、巨大企業・タイタスと与党の重鎮政治家の存在を掴む。そこに浮かび上がる乳幼児の奇病。暗殺者の手が迫る中、3人は幾重にも絡んだ謎を解き、ついに事件の核心を握る人物「佐々木邦夫」にたどり着く。乳幼児たちの人生を破壊し、通り魔事件を起こした真の犯罪者は誰なのか。佐々木邦夫が企てた周到な犯罪と、その驚くべき目的を知った時、3人は一発逆転の賭けに打って出る。

『犯罪者』下巻より

読書感想

どの世界でも共通すること

大企業、警察、土木関係など働く環境が違えど共通することがある。
それは「出世」である。

誰もが出世を望み、日々の仕事に奔走する。
当然のことだが出世する人がいるということは、出世できない人もいる。
この違いは一体何だろうか?

地頭がよく仕事がバリバリこなせるから出世をする。
一般的な考え方だが、真を食った答えではない。
なぜなら、頭のいい人間はたくさんいるからだ。

社会とは複雑で、真面目で仕事ができるタイプが出世を勝ち取るとは限らない。
もっとも、「上手くやる小狡いやつ」が1番得をする印象さえある。

つまり、組織の中で目立った功績を残すだけでは不十分で、
「組織が求める功績を、求められたタイミングで残す」必要がある。

さらに難しい問題がある。
それはあまり目立ってはいけないことである。

つまり、「組織が求める功績を、求められたタイミングで程よく残す」
これが組織の中で出世をするポイントとなる。
企業の規模が大きければ大きいほど、この要素は強く出る。

このような道を辿った幹部ばかりが集まる企業は、
一体どのようなものを世の中に残すのだろうか?

悲しい因果関係

人生に行き詰まったり、自分の思うようにいかなかったとき、
誰かのせいにしたくなるのは人間の習性である。

不安や悲しさに押しつぶされるのを恐れ、
誰かのせいにするということでその場を乗り切るのはある意味、有効な手段だ。

しかし、常に昨日の自分よりも成長を求められるこの世界では
自らの空想の世界に甘えてる時間もそんなにはない。

誰かのせいにして自分を正当化する行為は応急処置的な位置付けである。
しばらくすると、現実が姿を現し、こちらに威嚇の意を伝えてくる。
どうすることもできない自分は、自らの不甲斐なさに腹が立つ。

気がつくと、また現実に怯える自分に気づく。
気がつくと、また誰かのせいにする自分がいる。
気がつくと、また己の不甲斐なさに腹が立つ。

まさに負の連鎖である。
悲しい因果応報。

みんな最初からわかっている、
誰のせいでもない、自分のせいなのだと。

世界のカラクリ

時々、この世の中の仕組みについて考えることがある。
社会にはルールがあり、そのルールを守ることによって
私たちは日常という毎日を送ることができている。

世界中に散りばめられたルールに対して、
反抗の気持ちを行動を持って示した時、世界では戦争やむごたらしい犯罪が起きたりする。

戦争や凶悪犯罪は、世界のどこかでは起こっていることだ。
しかし、私たちの身の回りのことだとはあまり実感することは難しい。
平和ボケと言われればそれまでだが、現実としてそのような生活を送っている。

ここで1つの疑問が生じた。
果たしてこの世の中の秩序は何によって保たれているのだろうか?

先ほども述べたような、世界中に存在するルールなのか?
それともこの世界に暮らす人々のモラルなのか?

裏の世界があり、私たちには決して見えないところで、
確実な方法をもって、世界の秩序を保っているということはないだろうか?
時として、知らないことが幸せへの近道だったりもする。

今、この時間、世界のどこかで世界の均衡を左右するアクションが実行されているかもしれない。

まとめ

今回は小説『犯罪者』太田 愛著のご紹介でした。
上・下巻にまたがる長編は、怒涛の展開を呈し、
頭の中がオーバーヒート寸前の状態でした。

長編作品ということもあり、気合を入れて読み始めましたが、
それ以上に内容に引き込まれ、あっという間に読了。
残りのページ数が少なくなるにつれて寂しさを感じるほどでした。

Amazonからの購入はこちら▼

コメント