【独自感想】『不可逆少年』五十嵐 律人

小説

今回は小説『不可逆少年』五十嵐 律人(著)のご紹介!以前読んだ『法廷遊戯』に続く作品で、13歳未満の子供は刑事罰を受けることがない「刑事未成年」にスポットを当てた作品となっています。

五十嵐 律人さんは弁護士でありながら前作『法廷遊戯』で作家デビューを飾り、同作品は映画化もされています。弁護士であることを最大限に活かしたストーリー展開は、小説という媒体を通して馴染みのない私たちにも弁護士という職に触れるきっかけを与えてくれます。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『不可逆少年』
著者:五十嵐 律人
出版社:株式会社 講談社
発売日:2023年10月13日(第一刷発行)
メモ:デビュー作『法廷遊戯』に続く長編作品

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あらすじ

狐の面をつけた少女が、監禁した大人を次々に殺害する事件が発生した。凶器はナイフ、トンカチ、ロープ、注射器。常軌を逸した犯行は、ネット上で中継された。彼女は十三歳の「刑事未成年」で、法では裁かれない。「だから、今しかないの」ーーーーーーーー。ミステリー回の話題をさらったデビュー作『法廷遊戯』に続く衝撃作!

『不可逆少年』裏表紙より

読書感想

解決なき悩み

悩みを抱える際、それを誰かに打ち明けることは解決への一歩となる。しかし、深刻な悩みを持つ人々は、その悩みを人に話すことが難しいと感じることがある。これは大人の世界だけでなく、子供の世界においても同様である。特に、信頼できる大人が周囲にいない場合、悩みを共有することは一層困難になる

信頼できる大人とは、必ずしも問題を解決できる能力を持つ人ではない。むしろ、悩みを親身に聞き、共感を示してくれる人であることが重要である。悩みを打ち明けること自体が、悩みを抱える人にとっては大きな一歩であり、その悩みを真摯に受け止めてくれる人がいることが、解決への道を開くことがある。

したがって、信頼できる大人とは、解決策を提示することよりも、悩みを持つ人の気持ちに寄り添い、支えてくれる存在である。このような人が周囲にいることで、悩みを抱える人は孤独感から解放され、問題に対処する勇気を得ることができる。信頼できる大人は、解決力ではなく、理解と共感の力を持つ人であるべきなのである。

危うさを纏った人間

人間の魅力は多種多様であり、その中でもミステリアスな雰囲気を持つ人は特に興味を引く存在である。そういった人々は、どこか不確かで危うい雰囲気を纏っており、周囲を心配させるような、しかし魅力的なオーラを放っている。この種の危うさは、彼らの魅力の一部となり、人々を惹きつける要因となる。その人の周りには常に、彼らを放っておけない、守ってあげたいという感情が芽生える。

ミステリアスな人物に対するこのような魅力は、彼らがいつでもどこかに消えてしまいそうな、捉えどころのない存在であることから来る。彼らの周りには常に、何か未知の物語があるような気がして、その秘密を知りたい、もっと近づきたいという欲求を掻き立てる。しかし、その一方で、彼らの内面には誰にも分かち合えない孤独や葛藤があるかもしれないという想像が、彼らをさらに魅力的に見せる。

このように、ミステリアスな人物の魅力は、その危うさと不確かさにある。彼らは、周囲の人々にとって、ただの人間以上の何か、つかみどころのない魅力を持つ存在となる。その魅力は、人々を惹きつけ、同時に深い関心を抱かせる。人間の魅力には様々な形があるが、ミステリアスな雰囲気を持つ人々は、その独特の魅力で多くの人々の心を捉えるのである。

リセットはできないが、失敗はしろ

リセットボタンを押してやり直すことができるのは、ゲームの世界における限定されたルールである。現実世界では、一度起こったことを元に戻すことはできない。この事実を忘れ、ゲームのように何度もやり直せると考える人々は、現実の厳しさから目を背けていることがある。しかし、人間は失敗を通じて成長する生き物であり、失敗から学び、それを次のステップに活かすことで、より大きな成長を遂げることができる。

特に若い時期に経験する失敗は、その後の人生において貴重な糧となる。若さは、リスクを取り、新しいことに挑戦するための最大の資源であり、その時期に経験した失敗は、人生の豊かな経験として積み重なる。したがって、リセットボタンの存在しない現実世界においても、トライアンドエラーの精神で挑戦を続けることが重要である。

現実における挑戦は、失敗を恐れずに新しいことに取り組む勇気を必要とする。失敗は避けられないものであり、それを受け入れ、そこから何を学び取るかが、人間の成長において決定的な要素となる。リセットボタンはなくとも、失敗から立ち直り、前に進む力こそが、人生を豊かにする鍵である。

まとめ

今回は小説『不可逆少年』五十嵐 律人(著)のご紹介でした!この小説は、過ちと向き合い、成長していく少年たちの姿を通して、人生の不可逆性とその中で見出される希望に光を当てています。

失敗と後悔、そしてそれらを乗り越えていく過程を通じて、人生の美しさと可能性を再認識させてくれる一冊です。この小説を手に取ることで、読者自身もまた、人生の不可逆性を受け入れ、それでもなお前を向いて歩んでいく力を得ることでしょう。

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