【独自感想】『古本食堂』原田 ひ香

小説

今回は小説『古本食堂』原田 ひ香(著)のご紹介!最近ミステリーばっかり読んでいた私にとってはかなり落ち着いて温かみのある作品。普段、古本を読むことはほとんどないのですが、古本屋独特の隠れ家感が好きなこともあり購入してみました。

兄から引き継いだ古本屋を試行錯誤しながら営業していく物語。章ごとに神田神保町のグルメも紹介され、神保町の街並みにも興味を抱きます。ストーリー展開も緩やかで、ゆっくりじっくり読みたい人におすすめの作品です。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『古本食堂』
著者:原田 ひ香
出版社:株式会社 角川春樹事務所
発売日:2023年9月18日(第一刷発行)
メモ:神田神保町にあるグルメも紹介されている

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あらすじ

鷹島珊瑚は両親を看取り、帯広でのんびり暮らしていた。そんな折、東京の神田神保町で小さな古書店を営んでいた兄の滋郎が急逝。珊瑚がそのお店とビルを相続することになり、単身上京した。一方、珊瑚の親戚で国文科の大学院生・美希喜は、生前滋郎の元に通っていたことから、素人の珊瑚の手伝いをすることに・・・・・・・。カレー、中華など神保町の美味しい食と思いやり溢れる人々、奥深い本の魅力が一杯詰まった幸福な物語、早くも文庫化。

『古本食堂』裏表紙より

読書感想

主観と客観の狭間で

人間は自己認識において、主観的視点と客観的視点の間でバランスを取りながら生きている。主観的に自分を見すぎると、他人からの評価との間にギャップが生じ、自己と外界との間に誤解や不一致が生まれることがある。このバランスを適切に保ちながら自己評価を行い、成長していくことは、人生において重要な課題である。

一方で、新たな挑戦をする際には、主観的な思考が強く働く。自分がどうなりたいか、どのような人生を送りたいかという問いに対して、自分自身に答えを出す過程では、主観が大きな役割を果たす。このような状況では、自分の内なる声に耳を傾け、自己の願望や目標に基づいて行動することが求められる。

しかし、自分の能力や可能性を過大評価してしまった結果、その思い上がりに気づく瞬間は、非常に苦痛な体験となる。一度信じた自分の力が実際には期待に応えられないことを認めることは、自尊心に打撃を与える。しかし、このような経験もまた、自己認識を深め、より現実的な自己評価につながる貴重な機会である。主観と客観の間で揺れ動くことは避けられないが、その過程で自己理解を深め、成長していくことが、人間としての成熟につながるのである。

順応に泣かされる人間

人間は既存の生活様式に強く固執する傾向があり、その変化に対してはしばしばストレスを感じる。例えば、日本での生活に慣れ親しんだ人が海外で生活を始めた場合、日本では当たり前だったことが海外ではできないという経験は、大きなストレス源となる。また、社会が次々と生み出す新しいルールも、人々の生活に窮屈さを感じさせる原因の一つとなる。

しかし、時間が経過するにつれて、当初は受け入れがたかったルールや生活様式にも人は慣れ、それが自然なものとして受け入れられるようになる。この適応能力は、人間が変化する環境に対応できる強さとして捉えることができる。しかし、一方で、この適応過程には悲しみも伴う。かつては自分のアイデンティティの一部と感じていた価値観や習慣が、時間と共に薄れ、新しいルールや様式に取って代わられる過程は、自己の一部を失うような感覚を伴うからである。

このように、人間の適応能力は、変化への対応力の表れであると同時に、変化に伴う喪失感の表れでもある。人は変化する環境に適応することで生き延びるが、その過程で自己の一部を変容させることになる。この複雑な感情は、人間が経験する成長と変化の不可避な一面を示している。

転機予報士

人生における転機は、それぞれのタイミングで訪れる重要な瞬間である。若い時期に訪れる人もいれば、年齢を重ねてから訪れる人もおり、その時期が良いか悪いかを一概に判断することはできない。若くして成功を収める人々を見ると、多くの人が羨望の念を抱くことだろう。しかし、それが自己否定や自虐的な感情につながる場合、心理的な負担は大きい

重要なのは、転機は誰にでも訪れるという事実を理解し、自分にとっての転機を見極め、それを活かして飛躍的な成長を遂げることである。転機は、単に個人の努力だけでなく、人との出会いや仕事との巡り合わせなど、外部の要素が組み合わさって成り立つ。これらの要素が適切に噛み合うことで、人生は新たな方向へと進むことができる。

したがって、自分の人生における転機を迎えるためには、自分自身を信じ、準備を整えることが重要である。また、他人との関係性を大切にし、機会が訪れた際にはそれを逃さず掴む勇気を持つことが求められる。転機は予期せぬ形で訪れることもあるため、常に柔軟な姿勢で臨むことが、人生を豊かにする鍵となる。

まとめ

今回は小説『古本食堂』原田 ひ香(著)のご紹介でした!古本と食堂を舞台に、さまざまな人々の交流と成長を描いています。読者は、登場人物たちが抱える悩みや喜び、そして彼らがそれぞれの人生をどのように歩んでいくのかを、ページをめくるごとに見守ることになります。

物語の中で繰り広げられる、本にまつわるエピソードや食堂でのふれあいは、読者にとって心温まる体験となるでしょう。また、この小説は、日々の生活の中で忘れがちな、人生の素晴らしさや、周りの人々への感謝の気持ちを思い出させてくれます。

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