【独自感想】『家裁調査官・庵原かのん』乃南 アサ

小説

今回は小説『家裁調査官・庵原かのん』乃南 アサ(著)のご紹介!
家裁調査官とは、家庭内の問題や非行少年たちの立ち直りに向けて調査をする人たちを指します。事件の関係者や非行少年たちと直接面接を行ったり、非行少年たちの更生にも関わります。様々な事件があるのと同じように、それに関わる少年らも一人一人違った性格を持っています。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『家裁調査官・庵原かのん』
著者:乃南 アサ
出版社:株式会社新潮社
発売日:2025年2月
メモ:家裁調査官にスポットを当てた物語

あらすじ

少年少女たちは、なぜ罪を犯してしまったのか?その真の原因を探るのが「家裁調査官」である。福岡家裁北九州支部の調査官・庵原かのんは、自転車窃盗、JKビジネス、バイク暴走、女性暴行など数多くの事件に直面していた。当事者である子どもたちの声に耳を傾けるうちに、彼女はそれぞれの事件の”深い根”に気が付き、そして・・・・・。心理描写の名手が満を持して放つ、待望の新シリーズ。

『家裁調査官・庵原かのん』裏表紙より

読書感想

不言実行

私の友人に禁煙を8回も失敗した人がいる。その友人は禁煙を始める際に決まって、「今回は絶対に禁煙をする」と宣言をする。周りの人たちに宣言をすることで逃げられない状況を作っているのだろうが、結果として失敗しているからあまり効果がないのだろう。

そういう私も以前は愛煙家の一人だった。1日平均50本以上消費するベビースモーカーで、禁煙を試みる友人を横目に、自分は禁煙とは縁がない人間だと思っていた。朝起きてまずすることといったらタバコを吸う。お昼ご飯を食べ終わってすることは、タバコを吸う。トイレに行った後にすることは、タバコを吸う。こんな感じだった。

そんな私は27歳の時に当時付き合っていた彼女と結婚をした。同時に子供も授かっていたため、結婚して1年も経たないうちに子供が生まれた。子育てとは実際にやってみるとかなりハードなもので、こんなにも想像よりも実体験にギャップがあるのかと。

ある休日、午前中から妻が用事で家を空ける時があった。休みの日であったが子供の世話もあるため、早起きをし、午前中から精力的に活動をしていた。子供の体力は末恐ろしく、午後になっても遊びの手をとめない。しかも全力。そんなこんなでほとんど丸一日、子供にかかりっきりとなってしまった。胸ポケットに入れていたタバコを吸う暇もなかった。それから私は一本もタバコを吸っていない。

慣れる前に離れる

私が所属している会社では頻繁に部署異動がされる。長くとも3年。短い人だと1年で他の部署に異動となる。そんな短いスパンで異動を繰り返されるとせっかく覚えた業務内容も意味のないものになってしまう。私の同僚もこの会社の嫌な部分としてよく話題にしている。

ある年の部署異動で私の部署の部長が入れ替わった。新しく赴任した部長はこれまで接したことも見かけたこともない人で初対面だった。こんな人がいきなり異動してきて果たしてこの部署は正しく機能するのだろうか?同僚の間でもかなり不安と不満が溜まっていた。

4月、5月、6月と月日が経っていった。気づくと、やりづらさみたいなものを感じていない自分にはっとした。始まる前は新しい部長だとやりづらいのではないかとか、これまでのやり方が通用しないのではなど、不満ばかりだったのだが。。。。

つくづく人間という生き物は先を想像するのが苦手なんだなと思う。もしくは心配性なのか。会社帰りの飲み会でこの件について話してみた。すると、同席していた部長は苦笑を浮かべつつも、短いスパンで部署異動が行われるのは理にかなっていることだと教えてくれた。一つの部署に長期間居座ってしまうと、自分流のやり方を編み出してしまい、作業の引き継ぎが大変になるんだとか。慣れる前に離れることで、引き継ぐ内容も共通事項となる。

他者との違い

警察官になって初めて交通事故の現場に同行した際、先輩にこう言われた。「現場に着けば誰が当事者かすぐにわかるよ」と。その言葉を聞いた時はその意味がわからなかった。現場に着くと、かなり派手な交通事故だったようで人だかりができていた。

人だかりをかき分けるようにして事故現場に向かうと、完全に破損した車両が二台転がるように止まっていた。まずはこの事故の関係者に話を聞かなければと辺りを見回すと、すでに先輩が一人の男性と話をしていた。

小走りで近くに寄ってみると、どうやらこの男性が事故を起こしたみたいだ。「現場に着けば誰が当事者かすぐにわかるよ」と言われたことが頭をよぎった。事故現場にはかなりの人がいたはずなのに、先輩は短時間で事故の当事者にあたりをつけていたのだ。

一通りの対応を終え、先輩と警察署へ向かう。そこで聞いてみた。「なぜすぐにあの男性が事故を起こしたとわかったのですか」と。すると先輩はこう言った。「事故を起こした人はそのショックで顔の表情が抜け落ちる。それはぱっと見ただけでも他の人と明らかに見た目が違う」と。

コメント