【独自感想】『火車』宮部 みゆき

小説

今回は小説『火車』宮部 みゆき(著)のご紹介!
火車とは、生前、悪事を犯した罪人を乗せて地獄に運ぶという。また、地獄で罪人を乗せて責める火の車。なんともおぞましい言葉ですね。一度悪事を働いてしまうと、そこから抜け出すことができないだけでなく、一生、悪事を働いた事実に苦しむことになるということでしょうか。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『火車』
著者:宮部 みゆき
出版社:株式会社 新潮社
発売日:1998年2月
メモ:謎の女を追う物語

あらすじ

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪し、しかも徹底的に足取りを消してーーーーーーなぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。

『火車』裏表紙より

読書感想

知らないじゃ済まされない

現代社会は情報が溢れる時代であり、私たちの情報リテラシーはますます求められている。しかし、情報とうまく付き合っていくことは決して容易ではない。ネット上にはデマ情報が飛び交い、それに踊らされる人も少なくない。彼らが真剣に考えているからこそデマに惑わされる一方で、情報に頼りすぎる傾向も見られる。ネットの情報を100%鵜呑みにし、独自の考えを持たない人もいる。多くの人は、得た情報を基に自分の考えを形成し、それを行動に移しているが、情報を過信しすぎることには危険が伴う。

一方、情報に対して消極的になることもまた危険である。「X (前Twitter)」や「Instagram」を突然やめることで、デジタルデトックスの効果は得られるかもしれないが、数日もすれば情報不足を感じるだろう。世の中の動向が分からず、浦島太郎状態に陥ることもある。私たちがいかにネットやSNSを通じて情報を得ているかを痛感する瞬間である。

さらに、知らないことが時として罪となることもある。例えば、交通違反にしても、私たちが知らないだけで違反となる行為が存在する。知らなかったがゆえに人生を左右するような出来事に直面する可能性もあるのだ。情報の取り扱いには重大な責任が伴い、それを軽視することはできない。情報を正しく扱い、適切に活用することが、現代社会において生き抜くための重要なスキルである。

咄嗟の判断の優先順位

私たちは、臨機応変に行動する訓練を受けていない。そのため、咄嗟の判断や行動は、その人の性格や生活様式に大きく左右される。特に日本においては、平凡で安定した日々が当たり前とされ、いかに安定した生活を送るかが重視されている。こうした環境で育った私たちにとって、緊急事態に直面した際にスムーズに対応できる人はどれほどいるだろうか。

例えば、目の前で人が倒れた時に、理論上は救護活動の方法を理解していても、実際には足がすくんでしまい、すぐに行動に移せない人が多いのではないか。平凡な日常に慣れている私たちは、予期せぬ事態に直面すると、その場で適切な対応を取ることが難しい。

さらに、道路の反対側で人が倒れている状況を想像してみると、多くの人はまず助けに行くことよりも、道路の反対側に渡るための横断歩道を探してしまうかもしれない。これは、平時において優先されるべき行動が身についているため、非常時においてもその優先順位が変わらないからである。

感情のコントロール

人間はテンションが上がると、周りが見えなくなることがある。そして、そんな状態の人を第三者が見ると、滑稽に映ることが多い。冷ややかな目で見てしまうのは自然な反応だが、テンションが上がるというのは一種の生理現象であり、コントロールが難しい部分もある。喜怒哀楽のコントロールは非常に難しいが、感情をうまくコントロールできるかどうかは、日々の生活のパフォーマンスや人間形成に大きな影響を与える。

感情を冷静に保つことで、正しい判断を下す機会が増え、結果として生活全体の質が向上する。一方で、感情をうまくコントロールできないと、さまざまな弊害が生じる。例えば、感情に流されて場にそぐわない態度をとってしまうことがある。これは、空気が読めない人とされ、周囲からの評価を下げる原因となる。

常に自分の感情を意識することは難しいが、自分がハッピーである時に隣の他人が絶望感に打ちひしがれているかもしれないという想像力を持つことは重要である。こうした想像力が豊かな人は、他人に対して気を使える親切な人として評価される一方、想像力に欠ける人は不親切で空気が読めない人と見なされることが多い。感情のコントロールは、単に個人の問題にとどまらず、社会的な人間関係にも大きな影響を与える要素である。

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