【独自感想】『人形館の殺人』綾辻 行人

小説

今回は、小説『人形館の殺人』綾辻 行人(著)のご紹介!
著者人気の館シリーズ。顔のないマネキンが何体もいる「人形館」。父が遺したこの館は不気味な雰囲気を醸し出す。この人形館は賃貸アパートにもなっており、そこに住む人々も個性的なキャラクター。館シリーズ恒例のあの登場人物も。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『人形館の殺人』
著者:綾辻 行人
出版社:株式会社 講談社
発売日:1993年5月
メモ:「館シリーズ」の四作目

あらすじ

父が飛龍想一に遺した京都の屋敷ーーーー顔のないマネキン人形が邸内各所に佇む「人形館」。街では残忍な通り魔殺人が続発し、想一自身にも姿なき脅迫者の影が迫る。彼は旧友・島田潔に助けを求めるが、破局への秒読みはすでに始まっていた!?シリーズ中、ひときわ異彩を放つ第四の「館」、新装改訂版でここに。

『人形館の殺人』裏表紙より

読書感想

誰かのために

仕事から帰ってきたらまずはお風呂をためる。ためている間にお米を一合分洗って炊飯器のスイッチを入れておく。今日は比較的洗濯物の量も少ない。なので洗濯は明日まとめてすることにする。リビングにひいてあるラグに掃除機をかけているとお風呂が沸いた。

今日は先に入ってしまおう。30分くらいかけてお風呂に入った。この時間が一般的に長風呂なのか、そうでないのかは分からないが、平日のお風呂にしてはゆっくり浸かった感覚がある。お風呂から上がって水道水を一杯飲む。季節は冬だから水道水も冷たい。ここの地区は、夏場になると水道水が緩くなる。

今日の晩御飯は生姜焼きとほうれん草のおひたし、そして茄子を入れた味噌汁。生姜焼きは生の生姜を擦るところからスタートする。やっぱりチューブの生姜を使うより自分で擦った方が断然美味しい。生姜と調味料の香りが漂ってきたタイミングで換気扇を回す。

ご飯と味噌汁、生姜焼きをお皿によそってテーブルに並べる。向かい合った形での夕食。それは過去の思い出話にするにはまだ頭の中の整理がついていない。今日も無意識に二人分の夕食を作ってしまった。かつてパートナーが座っていた椅子には一体のマネキンが無表情でこちらを見ている。

見えない誰かに翻弄される

何事にも打たれ強い奴がいる。他人からどんな悪口を言われても全く気にしない。そういう人は自分に向けられた悪口を一旦受け入れるのだろうか。一旦受け入れた上で自分には関係のないことだと判断するのか、はたまた、自分に向けられた悪口に対して、相手にしないのか。

私たちは常に他人を意識しながら生きてしまう。しかもその他人は実在しないことが多々ある。自分の頭の中で勝手に形成された他人のありもしない感想を真に受け止めた結果、他人視点の行動をとってしまう。

自分に正直になれない私は、仕事中の行動一つとっても他人を意識してしまう。10分前にトイレに行ったはずなのにまた行きたくなってしまった。そんなことはあるだろう。しかし、他人の目を気にしてしまう私は、「またあいつトイレに行ってるよ」と思われてしまうことを恐れてなかなか席を立つことができない。

トイレを我慢しているせいか、手元の資料の確認も煩雑になっていた。これでは元も子もない。勇気を振り絞って席を立った。他人を気にせず生きることはなんて勇気のいることなのだろうか。

いつもいるやつ

ある日、学校の友達と映画に行く約束をした。当日、最寄りの駅でその友達を待っていると、その友達は別の友達と一緒に現れた。どうやらそいつも行くらしい。別に彼女とのデートを邪魔されたわけではない。紛れも無い男二人の遊びに一人加わっただけのことだ。

別の日、一人で近所の商店街を歩いていると、別のクラスの男子生徒たちが歩いていた。何が面白いのか、やけに大きな声を出して笑っている。その輪の中にまたあいつがいた。おちゃらけるタイプでは無いのだが、自分もこの仲間内の一人だという雰囲気を醸し出しながら連れ立っていた。

学校の休み時間に私は自分の机で読書をしていた。授業と授業の間の10分程度の休み時間にあえて友達とつるむのも面倒だと感じる私は、この時間を読書に充てていた。特段読書が好きなわけでは無いのだが、何もしていないと友達がいないのかと思われてしまう。それを防ぐために読書をしている人となるのだ。

私の斜め前の席では、クラスの女子生徒が三人集まって会話をしている。私の気持ちは文庫本の文章よりも女子生徒の会話の方に意識がいく。女子生徒の話題に登っていたのは、まさかのあいつだった。あいつはなんなんだ。どんなところにも出没しやがって。目立つタイプではなく、顔もそんなにいけてないのになぜかどのグループにも所属しているやつ。そんな奴はどこの世界もいるのだろうか。

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