【独自感想】『ピリオド』乃南 アサ

小説

今回は小説『ピリオド』乃南 アサ(著)のご紹介!
フリーカメラマン。何だか感受性の高い人を想像します。他の人よりも感情が豊かで、小さなことにも感動する。そこに煌めきを感じないとなかなかフィルターを通すことはできない。写真を撮ることが苦手な私にとっては憧れの存在でもあります。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『ピリオド』
著者:乃南 アサ
出版社:株式会社 双葉社
発売日:2024年5月
メモ:日常生活に起こりうるストーリー

あらすじ

フリーカメラマンの葉子は36歳の時に離婚。子どもはなく、東京のマンションに1人で暮らしていた。葉子は仕事先の編集者、杉浦と不倫関係にあったが、時を違えて甥と姪が長野からやってくる。2人の父親、洋子の兄は癌を患い闘病していたが、2人はそれぞれ事情を抱え、実家を出たいと強く願っていた。ーーーーーーー日々の生活で次々と起こる問題に直面し、様々な感情に揺れる葉子。今では空き家となり、朽ちた故郷の家に思いを重ね、過ごしてきた時間の中で徐々に積もっていった「心のしこり」と向き合う。

『ピリオド』裏表紙より

読書感想

あなたはどれだけのことを犠牲にしてきたか

年齢を重ねるうちに、それまでできていたことを手放すことが増える。例えば、自分に対して使えるお金がそうである。結婚し、子供ができると、稼いだ収入の優先順位は一変し、家族のために使う割合が増える。この変化は一見ネガティブなものに映るかもしれないが、実はポジティブに捉えることもできる。

何かを手放すことは、時として成長の一環である。スポーツ選手が結果を残すために食事管理を徹底し、お菓子などの間食を断つことを考えてみよう。「お菓子が食べられなくなった」と聞くとネガティブに感じるが、将来の成功や成長を目指す過程として捉えると、これはポジティブな選択であるといえる。つまり、成長や成功を追求するために、何かを犠牲にすることは自然なことなのだ。

成功を収めた人々は、往々にして何かを犠牲にしているように見えるが、それは周囲の目から見た捉え方に過ぎない。彼ら自身にとっては、興味や優先順位が変わった結果として、手放したものに執着がなく、むしろ「犠牲」という意識すらない場合が多い。

流される人、流されない人

影響されやすい人は、友達との食事会などで他者の話を聞いているうちに、その人の生活が羨ましくなり、つい感化されてしまうことが多い。例えば、友達が勧めた商品をすぐにAmazonで検索して購入し、商品が届く前に興味を失ってしまうこともある。これは、その場の感情で動いてしまうため、熱が冷めるのも早いからである。

では、どうすれば人に影響されにくくなるのか。単純な解決策としては、人と関わる機会を減らすことが挙げられる。影響とは他者との比較から生まれるものであり、自分の感情よりも周囲との違いが先に意識されるためだ。しかし、完全に人と関わるのを避けることは現実的ではない。むしろ重要なのは、自分の視点を優先し、他者の意見をあくまで参考として受け取ることである。

自分の考えを大切にしながら、どうしても決められないことがあった時に他者の意見を求める。ここで重要なのは、他者の意見をそのまま受け入れず、自分なりに肉付けをし、独自の視点を加えていくことである。そうして得られた答えは、自然とオリジナルなものとなるだろう。

休日に巡り会えない

休日の過ごし方に課題を感じる人は多い。休みを無駄にしたくないという気持ちが先立ち、午前中から予定を詰め込みがちである。何時に起きて、洗濯や掃除を済ませ、朝食を取る、といった具体的なスケジュールを立てることで、結局は休みというよりも忙しい一日になってしまう。このような状況は、心のどこかで休日を本当に「休む日」とすることに対する抵抗があるからかもしれない。よく耳にする「Time is money」という言葉が頭に浮かび、時間を無駄にしないようにせっかちに過ごしてしまうことが原因の一つである。

しかし、体調不良で急に平日を休んだ場合、同じようにスケジュールを立てて過ごすことは少ない。むしろ、体調が悪いことで、何も予定がない日をゆったりと過ごすことができる。思いがけない平日の休みは、まるで本来なかった休日が突然与えられたかのように感じられ、時間を贅沢に使うことができる。そのような日は、一日が長く感じられることさえある。

本来の休日を求める日々はこれからも続いていくだろう。情報過多の時代に何もせずぼーっとしていたとしても、どっかにいる誰かの充実した情報は手に入ってしまう。そこに踊らされた私たちは、ソファーに寝そべって読書に興じていても頭では別のことを考えてしまうのである。

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