【独自感想】『プロジェクト・インソムニア』結城 真一郎

小説

今回は小説『プロジェクト・インソムニア』結城 真一郎(著)のご紹介!
11人の男女が目を瞑っている表紙。
「プロジェクト・インソムニア」という言葉の意味もわかりません。

謎が多い作品ですが、読み進めていくうちにそれらの意味は明らかになっていきます。
#真相をお話しします』の著者による長編ミステリーはとても読み応えがあります。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『プロジェクト・インソムニア』
著者:結城 真一郎
出版社:株式会社 新潮社
発売日:2023年2月1日(発行)
メモ:『#真相をお話しします』の著者による長編ミステリー

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あらすじ

睡眠障害のせいで失業した蝶野は極秘人体実験「プロジェクト・インソムニア」の被験者となる。極小チップを脳内に埋め込み、夢を90日間共有するーーーーー。願望を自在に具現化できる理想郷は、ある悪意の出現によって恐怖と猜疑に満ちた悪夢へと一変する。次々に消えてゆく被験者たち、果たして連続殺人鬼の正体はーーーーー。驚愕の真相に涙が落ちる。再注目の新鋭作家による、大満足の長編ミステリー。

『プロジェクト・インソムニア』裏表紙より

読書感想

屈折したものと対峙する

人は誰でも多かれ少なかれ屈折したものを持ち合わせている。誰にも明かすことができない悩みもそのうちに入るのだが、なんだかんだ騙し騙し生き続けていられるもの事実である。それができるのはその屈折したものを覆い被せられるだけのプラスな要素があるからだ

仕事が大変で辛いけど、人生は充実しているというのがまさにそうで、自分のプライベートに絶対的な趣味やルーティンがある人はその恩恵を受けることができる。一方でこれといった趣味もなく、気がついたら休日が終わってしまっているという人は危険だ。屈折した部分が剥き出しの状態で放置されてしまっている

常に自分の視野の中に屈折したものが映り込み、気がつくといつもそのことばかりを考えてしまっている。そのような状態は自分自身のメンタルをどんどん深いところに導いてしまう。経験がある人ならわかるかもしれないが、屈折した部分というのは頑張ったところで修復することはできない。つまりそのことに悩んだところで明確な対応策は見つからないのだ。

だから人間は諦めによく似た感覚で、屈折した部分に目隠しをする。そこに意識を持っていかないように趣味や自身のルーティンに時間を使う。私たちが意識をしなければならないのは、屈折したものを持ち合わせてしまったことよりもそれをカバーする何かをたくさん見つけることだ

夢と現実

まさに夢のような出来事。という言葉があるように、夢とは非現実的で起こり得ないことが起こる場所とされている。夢の中では現実で体験できないようなことを体験できたり、思いもよらない出来事にも出くわす。しかし、それらの夢を体験したからといって、現実世界で役に立つことはあまりない。

夢の中で起きた出来事からヒントを得て、現実の世界で成果を出している人も聞いたことがない。つまり、夢の中の世界の定理は現実世界の定理とはイコールではないということだ。例えば、夢の世界で作った料理を現実の世界で同じように作っても同じものは出来上がらないということだ。

つまり、夢のような出来事も現実で起きてしまった以上、夢の中で起きることはない。当然その逆も然りなのだが、すると「正夢」という言葉の意味がわからなくなる。翌年が明けて初めてみる夢を「初夢」といい、「初夢」は「正夢」になるとも言われている。一体この慣わしはどこからきたのだろうか?

欲望とルール

現実世界ではさまざまなルールが存在し、そのルールから逸脱した行為をとると罰せられることもある。少なからず人々の心のうちには欲望があり、その欲望をちょっとずつ出して理想のものを手に入れる人もいれば、一気に欲望を丸出しにしていき過ぎた行為をしてしまう人もいる。

そういった欲望を際限なく出してしまうと、この社会の秩序は保てなくなってしまう。人を殺してしまうことや、人を騙してお金を巻き上げてしまうこと、スピード違反をしてしまうことも元を辿ると人間の欲望にいきつく。

しかし欲望は人間の本能でもある。本能は自らの意志でどうすることもできないこともある。どんなに意思の強い人でもお腹がすけば何か食べたくなる。物欲なども、気がついたらものを買ってしまっているという人もいるのではないか。

欲望をコントロールするために世の中にはルールというものが設けられているのだが、ルールの強弱もとても重要となってくる。がんじがらめな世の中は逆に欲望を生み出すことになってしまう。

まとめ

今回は小説『プロジェクト・インソムニア』結城 真一郎(著)のご紹介でした。
人間が抱えるさまざまな思考は、他人からは理解されないことであっても本人の中でははっきりと具体化されているのだなと感じました。

同じような立場の登場人物が多数いますが、十人十色、抱えているものが全く違います。そのため、この作品を読む人によってもその感想は異なることでしょう。

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