【独自感想】『三年坂』伊集院 静

小説

今回は小説『三年坂』伊集院 静著のご紹介!
5篇の物語が収録されている短編集。

以前読んだ『なぎさホテル』(株式会社 小学館) 伊集院 静著の中で紹介されていた作品。
どっかで見たことがあるなと思い、本棚を眺めてみると、ありました。

以前に読んでいたようですが、再読。
本文に線が引っ張ってあって、メモまで残していました。
そんな大切に読んでいたのに記憶がないとは。。。。

『なぎさホテル』についての記事はこちら▼

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『三年坂』
著者:伊集院 静
出版社:株式会社 講談社
発売日:2011年11月15日(第1刷発行)
メモ:著者の処女作品集

収録されている短編作品の一覧を以下にまとめます▼

収録作品
△ 「三年坂」
△ 「皐月」
△ 「チヌの月」
△ 「水澄」
△ 「春のうららの」

あらすじ

七夕の笹を求めて分け入った山中で窮地に陥った父を助けようと必死に走る少年の思い(「皐月」)、店が開店した日に事故で亡くなった母親の在りし日が鮨職人の心に鮮やかに甦る瞬間(「三年坂」)・・・・・。めぐる歳月と人生の哀切を、抒情あふれる端正な文章で描き出した、著者の原点とも言うべき珠玉の作品集。

『三年坂』裏表紙より

読書感想

子供の時の記憶

子供の時の出来事を思い返してみると、何もかもデカい
両親の姿もそうだが、家の玄関、近所の道路、庭に植っていた松の木。
そのどれもがデカく感じていた。

成長をすると体も大きくなるが、視野も広くなるのだろう。
子供の時は視野が狭く、そのせいでありとあらゆるものがデカく感じるのか。

小学校の校庭だって、デカく(広く)感じたし、
校庭にそびえ立っていた鉄棒だって、巨大であった。

それが少し大人になっただけで、校庭のデカさも鉄棒のデカさも
こんなもんだったっけと、寂しい気持ちになる。

デカいと言えば、人間の魂も比較の対象である。
魂がデカい人は、頼り甲斐のある人で子供の時などは憧れの存在である。
人間の魂は私が大人になっても小さくなったとは思わないだろう。

むしろ、深さが加わり、大人だからわかる圧倒的な雰囲気を感じるに違いない
自分もそんな大人になりたいものである。

雰囲気(オーラ)を感じる人は確かにいる。
言葉では表せないが、確かにそこに存在するのだ。

子供の時に感じた世の中のデカさは、成長と共に小さく収まってくる。
今度は自分の番なのかもしれない。
デカい魂と深いオーラを持つ大人に。

雨が降った日は

雨が降った日は外に出たくない。
だけど同時に、充実したインドア生活を目指したくもなる。
せっかく雨が降ったんだからと、自分自身を納得させながら。

不思議なことだが、雨の日の外出は憂鬱な気持ちになるが、
雨の情景を暖かい部屋の中から眺めるのは、安らぎを感じる。
雨とは不思議なものである。

私の視界いっぱいの風景を湿らし、うすーい鼠色をした世界を作り出す。
梅雨の時期のじめっとした季節は別だが、
部屋の中から見る雨の世界はひんやりとして、しんとしている

こんな日は、緑茶を飲みたい。
いつもはコーヒー党の私も雨という特別な日にいつもと違ったものを手にしたくなる。
普段は気にも留めない映画なんかにも目を向ける。

世の中にはこのような非日常を求めている人たちがいる。
特に農作物を育てている人たちにとって雨は貴重な栄養素だ。
雨が降らない日が続いてしまうと農作物の成長に影響が出てしまう。

だから天気予報士は雨予報であってもマイナスな表現は避けるらしい。
年間を通して雨の割合はどのくらいなのだろうか?

パッと考えても晴れ(または曇り)の日が多いことはわかる。
だからこそ、雨が降った日は特別なことをしたいと思うのかもしれない。

次、雨が降ったら何をしよう
そんな心踊る雨降る日が訪れるのだろうか。

数時間後の自分の姿

未来予知ができるわけではない。
ただ、数分後、数時間後、自分は何か大きなことを達成するかもしれないという
よくわからない予想
めいたものを感じることはある。

大抵の場合、その予想は外れる。
しかし、一度自分に期待をしてしまうと、胸がドキドキしてくる。
まさに将来の自分に舞い上がっている瞬間である。

予想が外れ、何も起きなかった時、落胆はするのだが、
あの時、ちょっと違う感覚で取り組んでいたらとんでもない結果をもたらしていたかもしれない。
というこれまたよくわからない反省をし、また胸がドキドキする。

この現象はなんだろうか?
ましてや、結果として何も起きていないのだ。
未遂に終わった出来事に対して興奮をしている

魚釣りに行った時。
そこにはよくわからない自信みたいなものがあり、これまでやってこなかったにも関わらず、
大物を釣り上げてしまうへんな予感が頭を支配し始める。

当然、そんなもんは釣れないのだ。
決まってそんな時は、家に帰ってから床に着くと、興奮して眠れなくなってしまう
あまりにも想像の世界と現実の世界とがかけ離れていて、冷静になると怖くなる。

もし本当に想像した通りになってしまったらどうなるだろう。
ほら、また想像の世界に支配されてしまう。

まとめ

今回は小説『三年坂』伊集院 静著のご紹介でした!
最近はミステリ作品など、ストーリー展開の激しい作品を読んできたため、
久しぶりに純文学を手に取りました。

伊集院 静さんは『なぎさホテル』(株式会社 小学館)の中で、
”作品の基軸に、どこかに真実から生じているものがなくては書きすすめることができない”
とおっしゃっています。

一から物語を生み出すことができないという意味だと思いますが、
経験から生み出された物語は説得力を持って、読み手の頭に風景が映し出されます。
伊集院 静さんの著書を読むと、沢山の経験をして分厚い人間になりたいと思わされます。

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