【独自感想】『#真相をお話しします』結城 真一郎

小説

今回は小説『#真相をお話しします』結城 真一郎著のご紹介!
タイトルに「#(ハッシュタグ)」が付いている作品は初めての出会いでした。

2023年の本屋大賞にもノミネートされているようで、かなり期待ができる作品です。
小説のジャンルとしては、ミステリ。
読者に対して真実を問うあたりも、なかなか魅力的です。

書籍の情報を以下にまとめます

INFO
タイトル:『#真相をお話しします』
著者:結城 真一郎
出版社:株式会社 新潮社
発売日:2022年6月30日(発行)
メモ:2023年本屋大賞ノミネート作品

収録されている短編作品の一覧を以下にまとめます▼

収録作品
△ 「惨者面談」
△ 「ヤリモク」
△ 「パンドラ」
△ 「三角奸計」
△ 「#拡散希望」

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あらすじ

家庭教師の仲介営業マンとしてしのぎを削る大学生。娘のパパ活を案じながらも、マッチングアプリに勤しむ中年男。不妊に悩んだ末、精子提供を始めた夫婦。リモート飲み会に興じる学生時代の腐れ縁。人気YouTuberを夢見る、島育ちの小学生四人組・・・・・・。令和の「日常」に潜む、かすかな違和感、そして狂気。あなたはその真相を見抜くことが出来るか。

『#真相をお話しします』裏表紙より

読書感想

営業という仕事

営業という仕事をすると、相対するお客さんが2種類いることに気づく。
1つは、お客様企業の社員
そしてもう1つは、自分が所属している会社の社員である。

営業という仕事は、自社のサービスまたはモノを利用することで
お客様企業にメリットがあることを説得力を持って紹介する仕事である。

お客様企業というのは自社にメリットがあることに対して興味を示す。
自分たちの企業で実現できないことだと尚更である。
そのため、しっかりとしたエビデンスを提示すれば、お客様企業への営業はシンプルで済む。

問題なのは、2つ目の自分が所属している会社の社員だ。
営業の仕事はただ外回りをして案件を受注すればいいというわけではなく、
むしろ、社内での様々な調整ごとが重要になってくる。

サービスを提供している会社であれば、そのサービスを作成する部署がある。
営業はその部署への依頼なども行わなければならない。

先述の通り、お客様企業というのは自社にメリットがあることに対して間口が広い。
しかし、自社の社員はそうはいかない。
なぜなら、サービスを生み出す側(自社社員)は自分たちの工数に目がいくからだ。

サービスの内容、取引先、売上高なんてものは関係がなく、
この仕事を受けることでどれだけ大変になるのかを気にする。
したがって、お客様企業よりも自社の社員を説得する方が大変である。

営業と聞くと、お客様を相手にする仕事かと思ってしまうのだが、
営業以外の技術者などサービスを生成する社員もお客様と関係を持つ。
営業の本質はお客様と自社社員とをつなげるパイプ役のようなものである。

異なる両者の求めるものに対して、起点を効かせる必要がある。
最大の敵は身内にいる場合も大いにある。

本来の姿

人間の本来の姿というのは、ふとした時に出てくるという。
つまり、無意識に行動したことが本来の姿という考え方だ。
本当にそうであろうか?

自分を殺し、周りのことを配慮して生活している人は
気持ち的な部分で言うと無理をしているかもしれない。
しかし、その心意気は歴としたその人の本来の姿なのではないか?

もしその人が寝ている時に、口の悪い寝言を言っていたとしても、
それが本来の姿なのだと冷たい目線を向けるのだろうか。
むしろ、無理させてしまっているなと感じる方が素直だ。

相手が気を抜いている瞬間を待ち構えて、首根っこを捉える、
その行いこそが、嫌な奴である。

つまり、誰にでも親切にする人を目の前にした時に、
「心の中ではどう思っているのだろう」とか「本性はどうなんだろう」
とかを考えること自体が間違っている。

人は自分以外の他人と関わっている時間が多い。
その多数を占める時間で醸し出す姿というのが本来の姿なのだ。
他人の本性を知りたがっている自分の顔をまず見た方がいい。

平和だと感じる時間

ふと、「平和だな」と感じる時のことを考えてみる。
大抵それは、ゆったりとした時間が流れている時だ。

春先の暖かい日曜日。
広めの川をスイスイと泳ぐカモ。
まさに「平和だな」という言葉が口をつく。

この平和という概念はおかしなことに人々の共通認識として存在しているように思う。
つまり、ガヤガヤとした雰囲気の場所では「平和だな」とは感じないということだ。

ただ、ガヤガヤとした雰囲気は平和によってもたらされていると言ってもいい。
人がたくさん集まって盛り上がっている場所はきっと平和であろう。

しかし、人々の口から「平和だな」という言葉が発せられる場面は決まって、
鹿おどしが一定の間隔で鳴っているような場所で、温かいお茶と甘い和菓子をつまみ、
お茶の苦味と和菓子の甘味をまとった吐息と共に発せられる。

まとめ

今回は小説『#真相をお話しします』結城 真一郎著のご紹介でした!
ミステリ調の短編が5篇収録されている作品で、
物語を読み終わった後にもう一度振り返りたくなる作品です。

伏線回収の要素が多く、とても楽しく読むことができました。
作品の内容自体は、令和の時代にあったテーマが題材にされています。
そのため、若くてあまり読書をしていない人でも楽しめる作品です。

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