『サイレント・ブレス』南 杏子

小説

今回は小説『サイレント・ブレス』南 杏子著のご紹介!
終末期医療を題材とした作品。

終末期とは、末期がんなど治療の見込みがなく死を待つのみの状態のことを言います。
今こうして当たり前のように生活を行っている中では、意識することはあまりないことでしょう。
しかし将来、自らが終末期を迎える可能性は十分に考えられるのです。

この作品を通して終末期を迎える側の気持ちと、
そばで見守る側の気持ちの両方を感じることができます。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『サイレント・ブレス』
著者:南 杏子
出版社:幻冬舎文庫
発売日:2018年7月10日(初版発行)
メモ:著者は都内の大学病院で勤務のご経験。

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あらすじ

大学病院から、在宅で最期を迎える患者専門の訪問クリニックへの”左遷”を命じられた三十七歳の倫子は、慣れない在宅医療にとまどう。けれども、乳癌、筋ジストロフィー、膵臓癌などを患う、様々な患者の死に秘められた切なすぎる謎を通して、人生の最後の日々を穏やかに送れるよう手助けする医療の大切さに気づく。感涙の医療ミステリ。

『サイレント・ブレス』裏表紙より

読書感想

死を覚悟してからの生活

10代、20代、30代と年を重ねていく中で、
どのあたりから人は「」を意識し始めるのだろう?
おそらく年齢ではなく自分の健康状態が大きな要因となる。

大きな病気を患った場合、強く死を意識する。
しかし、心の大部分を占めているのは病気を治すという希望であろう。
早く健康を取り戻して、好きなものをたくさん食べたいなど。

そこから様々な治療を行うわけだが、どこかのタイミングで死を覚悟することになる。
すると物事の考え方だけでなく、生活自体も変わってくる。
病気を治すための生活ではなく、悔いのない生活を送ることに変わる。

この悔いのない生活へのシフトチェンジは、すなわち自らの死を認めることとなる。
治療方針も「治す」ことから「延命」となり、穏やかに死を迎えることを目指す。

ある程度やりたいことをやって、食べたいものを食べる生活。
気持ちを割り切ることによって、辛い治療から解放される。
しかし、「死」と鉢合わせるスピードも格段に上がる。

死を覚悟してからの生活は想像してもわからない。
好きなことをして、食べたいものを食べる。
だけど近い将来死ぬことになる。

諦めるということ

諦める」という言葉を聞くと、自分に甘い人であったり、意志が弱い人を思い浮かべる。
しかし、終末期医療において「諦める」という言葉には患者の意思の強さを感じさせられる。

普段の生活で重要になってくるメンタル。
自分のメンタルをうまくコントロールしながら生活することが大きな鍵となる。

確して、そのメンタルを意識するタイミングは状況が落ち込んでいる時だ。
私生活や仕事がうまくいっている時は、メンタルに目を向ける人はほとんどいない。
落ち込んでいるときに初めてメンタルをコントロールしようとするからさらに辛くなる。

常日頃から自身のメンタルを意識しておくことによって、
ピンチが訪れた際のメンタルコントロールもスムーズに行える。

そもそもメンタルをコントロールする必要性はどこにあるのだろうか?
おそらくそれは、状況を打開するためであったり、好転させるためである。

したがって、終末期医療を受け入れる際のメンタルコントロールはこれまでとは違う。
死を受け入れられるメンタルを果たして自分は持っているのだろうか?

迎える側と見送る側

終末期医療では、死を迎える側見送る側が問題となる。
いくら患者本人が死を受け入れ、穏やかな余生を求めていたとしても、
その家族が納得するかは別問題である。

第三者からすると、患者本人の意思を尊重するべきだと思うのだが、現実はわからない。
もし、自分の家族が終末期医療をするかどうかの選択に迫られたとき、
私の感情はソファーにゆったりと座ってテレビを見ている今とは違うかもしれない。

患者本人とその家族との間で考え方に違いが出ないよう、
元気なうちから話し合っておくことが大切だと聞くが、そんな悲しい家族団欒も好んではしない。

難しいことではあるが、結局は普段からのつながりが重要になるのかもしれない。
仲のいい関係性であれば、辛いけど一番いい道を選択しようとするはずだ。
その中で選んだ道はどの道であれ、みんなが受け入れることができる。

まとめ

今回は小説『サイレント・ブレス』南 杏子著のご紹介でした。
終末期医療を題材にした作品で、物語とはいえ、かなり重みを感じました。

人間は死に向かって生きているようなもので、いつかはその時が訪れます。
自分が患者本人になることもそうですが、見送る側でもあるのです。

現実を感じて悲観的になりすぎることなく、
堂々とその時を待ち構えられる人間になりたいと思いました。

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