【独自感想】『天上の葦 上・下』太田 愛

小説

今回は小説『天上の葦 上・下』太田 愛(著)のご紹介!上・下巻に分かれたミステリーは今回も怒涛のストーリー展開でした。先に上巻だけ買って様子見をした自分が恥ずかしいくらい。下巻に至ってはほぼ一気読み。

同著者による『犯罪者 上・下』と同様、表紙がつながるデザイン。タイトルや表紙からは作品の内容を想像できませんが、読後納得の作品でした!

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『天上の葦 上・下』
著者:太田 愛
出版社:株式会社 KADOKAWA
発売日:2019年11月25日(初版発行)
メモ:『犯罪者 上・下』に次ぐストーリー

こちらの書籍を購入した際の記事もご覧ください▼

『犯罪者 上・下』の独自感想はこちらから▼

あらすじ

『天上の葦』上巻

興信所を営む鑓水と修司のもとに不可解な依頼が舞い込む。渋谷のスクランブル交差点で、空を指さして絶命した老人が最期に見ていたものは何か、それを突き止めれば1000万円の報酬を支払うというのだ。一方、老人が死んだ日、1人の公安警察官が忽然と姿を消す。停職中の刑事・相馬は彼の捜査を非公式に命じられるがーーーーーーーー。2つの事件の先には、社会を一変させる犯罪が仕組まれていた!?サスペンス・ミステリ巨編!

『天上の葦 上』裏表紙より

『天上の葦』下巻

失踪した公安警察官を追って、鑓水、修司、相馬の3人が辿り着いたのは瀬戸内海の小島だった。そこでは、渋谷で老人が絶命した瞬間から、思いもよらないかたちで大きな歯車が回り始めていた。誰が敵で誰が味方なのか。あの日、この島で何が起こったのか。穏やかな島の営みの裏に隠された巧妙なトリックを暴いた時、あまりに痛ましい真実の扉が開かれる。すべての思いを引き受け、鑓水たちは巨大な敵に立ち向かう!

『天上の葦 下』裏表紙より

読書感想

子供の頃の記憶

ふと、子供の頃の記憶を辿る時がある。鮮明に覚えていることもあれば、朧気な記憶もある。そして、その他多くの記憶にもないことがある。

私がまだ小学生の頃。実家の庭で弟、近所の友達とサッカーをして遊んだ。当時、庭の中央には大きな松の木が植っていた。サッカーボールを蹴り上げるとよく、松の枝に引っかかったりして、満足にボールを蹴ることができなかった。

そんなもどかしい小学生が過ぎ、中学、高校と成長するにつれ、庭でサッカーをする機会もなくなっていった。私が高校生の時、庭の中央に鎮座していたその松の木は根本から切られた。松の木がなくなった庭はすっきりとしたが、なんだか寂しい感じもした。

小学生の時にもし松の木がなければ、サッカーボールを思い切り蹴り上げることができたかもしれないな。そんなことを思ったのもだいぶ昔になる。今に至っては、松の木がない庭の姿が私にとっての当たり前となってしまっている。

子供の頃に撮った写真を見返した時に、そういえば庭に松の木があったなと懐かしく思う始末だ。過去の当たり前は現在の当たり前によって人々の記憶から消えてしまうものなのだろうか。

高級な衣服を身に纏ったデブ

世の中には成功者と呼ばれる人がいる。その成功者を見分けるポイントの1つは、身につけている衣服だ。誰もが知るハイブランドを身につけている人はすなわち、成功者なのだ。

この考え方が正しいのであれば、成功者=お金持ちということになる。そして多くの人が成功者になりたいと思っていることだろう。

衣服というものはサイズ展開が豊富であり、どんな体型をした人でも着ることができる。細身のドレスが着たい、タイトなジーンズを履きたいという思いは、ただの願望である。この世の中には太った人でも着れるドレスもあるし、ジーンズだってある。それを身につければいいだけの話である。

成功者=お金持ちなのだから、体のサイズに合ったハイブランドを身につけることでその道は開ける。そんな服たちを着ながら人生の勝ち組として肩で風を切ればいいのだ。

まさに、高級な衣服を纏ったデブである。これがみんなが求める成功者の形なのだ。この表現は様々なものに言い換えることができる。”豊富な知識を持った偽善者”、”ありがとう、ごめんなさい、すみませんしか言わない人”

共通していることは、中身が伴っていないということだ。いくら高級な衣服を身につけていても、いくら豊富な知識を身につけていても、いくら感謝・謝罪の気持ちを伝えていたとしても、中身が伴っていないと陳腐になる。見る人が見れば気づいてしまうレベルということだ。

こう思うと、本当に自分がなりたい将来像に疑問を抱いてしまう。表面を磨こうことは簡単だが、見えないところまで気を使う。そんな人間になれるのだろうか。

無敵の最終形態

人間は1日に何回嘘をつくのだろうか。他人につく嘘、それに加え、自分につく嘘も合わせると想像以上に嘘をついているのかもしれない。

嘘とは事実とは異なることを指すわけだが、「嘘つきは泥棒の始まり」という言葉があるように、犯罪の初期段階的な存在なのか。

しかし、よくよく考えてみると、事実と異なる情報を他人に言い伝えることは、とてもではないが犯罪の初期段階で収まるものではない。事実を捻じ曲げ異なる情報をあたかも正しい情報だと伝える行為は人間を支配することだって可能になる。

洗脳やマインドコントロールも嘘の情報を相手に信じ込ませることで成り立つ。洗脳やマインドコントロールが引き起こした犯罪は日本国内でも有名なものがある。

つまり、嘘の情報を信じ込ませ、自分の言いなりにさせる行為は、無敵の最終形態と言える。1度、操り人形の如く相手の心身を牛耳ってしまえば、好きなようにコントロールすることができる。それだけ情報の細工は危険を孕んでいる。

まとめ

今回は小説『天上の葦 上・下』太田 愛(著)のご紹介でした!『天上の葦』というタイトルからはどんな内容なのか想像ができませんでしたが、読み進めていくうちにその理由もなんとなくわかったような気がします。

上・下巻にわたる長編作品ですが、飽きることなく読み切ることができました。太田 愛さんの作品はもう1冊購入しているため、そちらの作品も早く読みたいです。

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