今回は小説『ザ・ロイヤルファミリー』早見 和真(著)のご紹介!
馬主とその家族を描いたストーリー。日本において競走馬の馬主になるためには条件があります。「所得金額が過去2年いずれも1,700万円以上であること」かつ「保有する資産が7,500万円以上であること」大きく分けてこの2つの条件を満たしていないと競走馬の馬主になることはできません。
馬主は保有する競走馬の飼育代を支払う必要があるため、それだけお金がかかります。つまり、経済的に十分余裕がある人でないと競走馬を保有することはできないのです。そんな選ばれしものしかなれない馬主を題材とした作品となっています。
書籍の情報を以下にまとめます▼
INFO
タイトル:『ザ・ロイヤルファミリー』
著者:早見 和真
出版社:株式会社 新潮社
発売日:2022年12月
メモ:山本周五郎賞受賞作品
あらすじ
お前に一つだけ伝えておく。絶対に俺を裏切るなーーーーー。父を亡くし、空虚な心を持て余した税理士の栗須栄治はビギナーズラックで当てた馬券を縁に、人財派遣会社「ロイヤルフューマン」のワンマン社長・山王耕造の秘書として働くことに。競馬に熱中し、〈ロイヤル〉の名を冠した馬の勝利を求める山王と共に有馬記念を目指し・・・・・。馬主一家の波瀾に満ちた20年間を描く長編。山本周五郎賞受賞作!
『ザ・ロイヤルファミリー』裏表紙より
読書感想
現代における人付き合い
人生の充実度は人間関係が握っていると言っても過言ではない。どのような環境に身を置いても、良好な人間関係が築けていれば幸せを感じることができる。一方で、何かトラブルを抱えている場合、どれだけ他の面で成功していても、心からの幸福感を得ることは難しい。たとえ巨額の富を築いた人でも、人間関係の悩みを抱えていることは珍しくない。
このような考え方に立つと、物事を選択する際に人間関係を軸に考えることが有効だと考えられる。少々気が進まない仕事であっても、信頼できる仲間と共に行えば楽しさが生まれるように、何をするかよりも誰とするかが重要になるのだ。
そのため、人付き合いが人生の幸福において大きな要素となる。人付き合いとは、必ずしも苦手な人と無理に仲良くすることではない。むしろ、苦手な人と距離を置き、親しい人とどのように多くの時間を過ごすかが現代社会での人間関係の鍵となる。特に重要なのは別れの場面である。一度築いた関係を解消するプロセスには多くのストレスが伴い、それが人生の幸福感を損なう要因になりうるからだ。
うしろめたさが感情の引き金を引く
人間はうしろめたい気持ちが感情の引き金となることが多い。その代表例として挙げられるのが暴飲暴食である。本来、体に良くないと理解していても、そのうしろめたい感情を押し込んででも続けてしまうのが暴飲暴食の特徴だ。
また、男女関係においてもうしろめたさが行動の動機となることがある。浮気や不倫はその最たるもので、現代社会において不貞行為が頻繁に取り沙汰されるにもかかわらず、そうした行為が後を絶たない背景には、ダメだと知りながらもやめられない感情の存在がある。むしろ、禁止されていることへの背徳感が行動を加速させる場合もあるのかもしれない。
犯罪の場合、法律によって処罰が科されるため、その抑止力が働く。しかし、暴飲暴食や不倫のように法に触れない行為には明確な罰がないため、歯止めが効かないことが多い。こうした行為には社会的な非難や個人的な後悔は伴うが、確たる制裁がないことが、繰り返しを許してしまう要因となっているのだ。結果として、人間は自らの行動に対するうしろめたい感情を糧にしながらも、それを超えた快楽や欲求に流されやすい生き物であると言える。
友達が持っていたおもちゃが羨ましい
人生において憧れの人を持つことは珍しくない。「あの人みたいになりたい」「あの人のここがすごい」といった想いを抱くことは、自分を成長させる原動力にもなる。しかし、憧れの人と肩を並べることを目標にする人は少ない。
憧れの対象はあくまでも憧れとして崇めたいという心理が働き、自分がその人物を超えたと感じることを「失礼」と考える場合もある。それは、憧れの人に対する深い敬意を表している証拠でもある。しかし、いつまでも憧れのままでは、ただ羨望のまなざしを送り続けるだけで終わってしまう。
憧れの人を目標とするなら、いつかその人を超えるという心構えが必要である。憧れをただ眺めるだけでは、他人の所有物を羨む子供のような行為に過ぎない。憧れを目標に変え、その実現を目指すことで初めて自分の成長につながる。もちろん、目標を超えたかどうかの判断は難しい。しかし、機会を逃さず行動し続けることこそが重要であり、その積み重ねがいつか自分の成長を証明することになる。
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