『嘘つきジェンガ』辻村 深月

小説

今回は小説『嘘つきジェンガ』辻村 深月著のご紹介。
嘘に嘘を重ね、修正が効かなくなってしまう様子が表紙のジェンガの不安定さに現れています。

私自身、久しぶりのハードカバー。
持ち運びは大変ですが、ずっしりとした重みが読書時間を彩ってくれます。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『嘘つきジェンガ』
著者:辻村 深月
出版社:文藝春秋
発売日:2022年8月30日(第1刷発行)
メモ:「嘘」をテーマにした3作品を収録

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収録作品

『嘘つきジェンガ』には3つの作品が収録されています。

収録作品
1. 2020年のロマンス詐欺
2. 五年目の受験詐欺
3. あの人のサロン詐欺

3つの作品は独立したもので、つながりはありませんが、
「嘘」が共通のテーマとなっています。

軽はずみについた嘘や、大胆な嘘。
読んだ人の中にはどこか共感の念を抱く人もいるかもしれません。

読書感想

他人との比較

SNSが満映されている近年では他人のプライベートを簡単に見ることができる。
人と人との距離感が近くなった。
そのような感想を持てていたのは、何年前までだろうか?

ここ数年のSNSは少し形を変えた。
今までは他人のプライベート、すなわち「素」の部分が見えるのがSNSだった。

しかし最近のSNSの利用は自らをブランディングするためのツールとなった。
最新の加工技術と高性能な写真技術を駆使することで、
一般人でもプロ顔負けの写真を撮ることができる。

もはや、「プライベートで行ったどこどこ」や、「プライベートで食べた〇〇」は
プライベートであり、プライベートではない。

偽りのプライベートは他者との比較によって生まれる。
「隣の芝生は青い」ということわざがある。

昔は良かった。
隣だけを意識していればよかったのだから。

嘘を欲する気持ち

嘘をつく人の背景には、暗い感情がある。
悲しい気持ち取り残された気持ち、そして恐怖などである。

悲しい気持ちや取り残された気持ちは、嘘をつくきっかけを作る。
自分のことは誰も興味を持ってくれない、友達はみんな充実した生活を送っている。
そういった感情から身を守るため、嘘をつく。

嘘をついたことによって出来上がった偽りの自分は、
計算されて作られただけあってとても魅力的だ。

一方、恐怖の感情は嘘を重ねるきっかけを作る。
嘘をついたことで得られた他者からの羨望の眼差しは、
いわばフィーバータイムである。

フィーバータイムは時間が経つと終了する。
冷静な頭で考えると、嘘がバレた時のことがよぎり、恐怖する。
その恐怖を打ち消す方法は、やはりまた嘘をつくことである。

お人好しの嘘の真実

嘘をつくことはいけないこととされている。
しかし、例外もあるみたいだ。
それが、「誰かのためにつく嘘」だ。

その人のことを思い、その人のためを思って嘘をつく。
ただ、ここには危険が潜んでいる。
なぜなら、嘘に対する答え合わせができないからだ。

つまり、嘘をついたことがプラスに働いたのかマイナスに働いたのかの判断ができない。
私があそこで嘘をついてあげたことによって状況が良くなった。
この考え方をしてしまうと、どんどん沼にハマる。

人間関係で重要な信頼を築くことは困難になり、
常に他者に対して疑いの目を持つことになる。
誰かのためにつく嘘は、言葉を変えると誰かも私のために嘘をついていることになる。

効果が可視化できない戦略は有効ではない。
人間、生きていればいい時もあれば悪い時もある。
そのプラス・マイナスを繰り返し、最期にプラスで終われば幸せだ。

まとめ

今回は小説『嘘つきジェンガ』辻村 深月著をご紹介しました。
収録されている3作品ともとても面白く、ハイペースで読み終えてしまいました。

「嘘」をテーマにされている小説で、
ストーリーの細かな部分は、私たちの日常でも起こり得ることだと思いました。

それぞれの作品に人間の内面が描写されており、
深層心理を揺さぶられる作品でした。

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